お高いですよ?

「どうしよう、このままじゃ…」


なんとかならないものかと、頭を抱えた時だった。
また、事務室の扉が開く。


「…なんすか、この騒ぎ」

「「!!」」


一段と眠たそうな、気怠気な声。
出社してきたばかりなのか、私服の司は事務室内でわいわいと騒ぐ俺達に不思議そうな顔をした。
派手すぎず、傍から見れば地味だが真面目そうな司。
俺はピンと閃く。

「そうだ、司ならなんとか…!一番まともそうだし!」


「ああ、まあ、確かに」と渋々同調してくる翔太。
相変わらず不思議そうだったが、特に狼狽えるわけでもなく司は「なんかよくわかんないけど…ありがと」と呟く。
そして、やつは改めて事務室内を見渡し、俺に目を向ける。


「それで、なんの騒ぎ?」


人によっては冷たく感じる素っ気ない口ぶりだが、動揺している今、司みたいな落ち着いた人間が必要だった。
乱れた呼吸を整え、俺は司と向き合う。


「頼む、一生のお願いだ。少しの間だけでいいから俺のフリしてくれ」

「別にいいけど、お礼は?」

「は?」

「まさかタダで俺に働けって言うわけ?」


本当こんなやつらばっかだな、この店は。

mokuji
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