保護者の役目 俺は絶体絶命だった。 いや、この店で働き始めてもう何回絶体絶命に陥ったのかわからないが、それでも今は俺の自尊心が危ぶまれる危機に陥っているのは確かで。 店内、店員専用の便所の個室にて。 モップ片手に身構える俺の目の前には、チューブを手にした元友人の中谷翔太がじりじりとにじり寄ってくる。 「カナちゃん、脱いで」 「…やだ」 「脱いで」 「嫌だああっ!」 そして、長いのか短いのか分からない攻防の末、実力行使に出やがった翔太に思いっきり身ぐるみひっぺがされる。 狭い場所じゃ全く役に立たないモップであった。 脱ぎたてほやほやの人の服を抱いた翔太は、寒さやら恐怖やらでぶるぶる震える俺を見下ろす。 「上半身よし、下半身よし、下腹部は…」 頭から爪先まで舐めるように向けられる視線は俺の股間で動きを止めた。 服を脱がされようとも、必死に死守したパンツだ。 俺は腰を庇いながら、翔太を睨みつける。 「いやだって、いってんだろ」 そう、反抗を試みたとき。 思いっきりパンツを脱がされそうになり、慌てて翔太の手を抓る。 しかし、やつはしぶとい。 そりゃもう、ガムテープの粘着並みに。 「これはカナちゃんのためだって言ってんじゃん!」 「じゃあなんで鼻血出してんだよ、気持ちわりい!」 「きっきも…っ!!」 と、なにやらショックを受ける翔太。 ただでさえ鼻血でグロテスクなことになっているにも関わらず、その鼻からは更にぼたぼたと大量の鼻血が溢れた。 「ひぃっ」 「カナちゃんが悪いんだよ、そんな目で、僕を見るから」 もしもそれで興奮したというならこいつはあれだ、マゾ野郎か特殊性癖の持ち主に違いない。 鼻血流す友人にパンツを取られそうになるというのはなかなかホラーで、なんだかもう俺は泣きたくなった。 ちょっと涙でた。 しかし、そんなナイーブで繊細な俺とは反対にやつは敢えて空気も読まないといったやつだ。 勿論、俺の出てるかどうかすら危うい涙で引くようなやつではない。 「触んなって、バカッ、触んなってば!やだ、翔太、やめろこのっ」 攻防戦は揉み合いに発展する。 頼りになるのは俺だけだとモップを捨て、目の前のあいつの胸板を押した。 それと、翔太の指が下着の裾から入ってくるのはほぼ同時だった。 びくりと全身が紅潮する。 慌てて、腰を引こうとするが、目の前の翔太に下半身を擦り付けるようになってしまい、慌てて後退った。 背中に壁がぶち当たり、自ら行き止まりへと行ってしまう。 「、やっ」 「いや、じゃない」 耳元に、翔太の息が吹きかかって顔が熱くなった。 割れ目を滑る指先が、窄みを掠り、動きを止める。 そして、そのまま解すように突かれたと思った瞬間、ぬるりとスムーズに指が入り込んだ。 下半身に力を入れていたが、無駄だった。 ぬめりを帯びた液体を纏わり付かせた翔太の骨張った指は、俺の意志に関係なく締めたそこを割り開くようにして入ってきて。 体内を這いずるにゅるりとした違和感に、胸が震えた。 「っひ、ぅ、てめ」 「薬、塗ってるだけでしょ。カナちゃんが自分でしないから」 |