大凶。探しもの見つかる。

「はい、じゃー今日も一日適当に商品売り受けちゃってねー」

「うぃーっす」

「では、かいさーん」


なんとも気の抜けるミーティングだろうか。
形だけだとしても、形にすらなっていないミーティングを終え、集まっていた店員たちは各々の持ち場へと戻っていく。
僕も、そのうちの一人だった。

店内へと戻り、暇潰しに商品を物色していた時だ。
不意に、店の扉が開いた。


「もう客かよ…」


雑巾握りしめた四川阿奈が面倒臭そうに呟いた。
その言葉に釣られるように振り返った僕は、とびっきりの営業スマイルを浮かべる。
しかし、そんな僕のスマイルはすぐに壊された。


「いらっしゃいま…って、」


扉の向こう、入ってきたのは一人の男。
それは、僕にとって酷く見慣れたもので。
ずっと、探していた顔で。


「……おはよーございます」


「か、なちゃん」と、無意識の内にその名前を口にしていた。
その呼びかけに気付いたのか、こちらを見たカナちゃんは「ひっ」と青褪める。
なんだ、『ひっ』って。
もっと他に言うべきことがあるんじゃないのか。
そう、駆け寄ろうとした時だった。
カナちゃんのすぐ背後で、影が動いた。


「…どーも」


影、もといカナちゃんの後ろから現れた黒髪の男に僕は凍り付いた。

mokuji
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