失ったものは大きい ねっとりと絡み付いてくる熱く濡れた舌の感触にぞわりと背筋が震える。 反射的に背筋が伸びた。 「っぃ、やめ」 『やめ?』 「…っ!」 そうだ、今は電話中だった。 ちょっかい掛けてくる司に流されそうになってしまい、慌てて口を閉じた。 「原田さん、会話」 そんな俺の様子を楽しんでいるのか、相変わらずの無表情のまま司は囁きかけてくる。 耳に生暖かな吐息が吹き掛かり、ふるりと上半身が震えた。 言いたい文句は山ほどあったが、今は紀平さんだ。 「すみみせ、…っなんでも、ないです」 『そ?ならいいけど。なんだか様子がおかしいみたいだったから、てっきり俺、ヤッてる最中かと思っちゃった』 なるべく平静を装ったつもりだったが、やはり、不自然だったらしい。 何気ない調子で遠慮なく、それでも的確に痛いところを突いてくる紀平さんに全身からどっと嫌な汗が滲んだ。 体に力が入ってしまったらしい。 下の司が僅かに身動ぎ、結合部をなぞってくる。 やめろ動くなバカ。と視線で返せば、やつは良からぬ方向に受け取ったらしい。 既に司のものを飲み込んだそこをなぞっていた指が、スカートの裾の下で反り返っていた性器に触れる。 「ぅ、…っ」 『でさ、質問なんだけど、かなたん。さっき電話に出たやつって友達?』 「でん、わ?」 何回も射精したそこは既に精液で汚れていて、少しの愛撫だけでも込み上げてくる熱に頭がおかしくなりそうだった。 いっそのことわけもわからなくなるくらい射精しまくった方が楽なのだろうとは思ったが、そういうわけにはいかない。 紀平さんが言っているのはおそらく翔太のことだろう。 「んっ、ぁ、多分、あの、そういうアレかもしれません」 『へぇ、そっか。なるほどねー』 すでに自分の呂律が回っていないことに気付けるほどの余力はない。 性器を弄んで、締め付けを楽しむ司の指先から逃げようと腰を動かしながら、俺は受話器を見た。 「あのっ、それが…?」 『あ?いいよいいよ、あとはこっちで話し合っとくから。かなたんはゆっくりしててね』 今、忙しいみたいだしね。と、紀平さん。 次の瞬間、俺の返事も聞かずに通話は強制的に打ち切られる。 聞こえてくるツー音を聞きながら、紀平さんの気遣いに今はただ感謝する。 後悔や自己嫌悪は後だ。 |