マゾウエイトレスの正しい宥め方 声を聞かせる。 なんてこと、出来るわけがないだろう。 だって、こんな状況で。 ドクドクと脈打つ性器の感触に息を呑み、ふるふると首を横に振る。 無理だ。 絶対無理。 どれくらい無理かというと、ウエイトレスの服装で外をほっつき歩くよりも無理だ。 全部俺だけど。 「原田さん」 「っぁ、んんっ」 ぐ、と中のそれで奥を突き上げられ、耐えられずに仰け反る。 そして、しまったと顔面蒼白になる。 『かなたん?』 押し付けられた携帯電話の受話器から、紀平さんの声が聞こえてきた。 久しぶりに聞いたその声に、胸が弾んだ。 「あ、きひらさ……」 無視しようと思ったのに、出来なかった。 それほど、自分に余裕がなくなっているのがわかった。 携帯を渡されたところで何を言えばいいのか、どうすればいいのか全くわからない。 何か言わなきゃ、と焦る度に頭の中が真っ白になって。 「何を、そんなに緊張してんの?」 「そんなにキョドってたら怪しまれるんじゃないのか」と携帯電話を押し付けられている方とは逆の耳朶に押し付けられる唇に、更に顔が熱くなる。 まだ、見た目からしてまともなやつだと思っていた。 信じていたかった。 しかし、やはり類は友を呼ぶという言葉には間違いなかったようだ。 鼓膜に直接入り込んでくる耳障りのいい声に、吐息に、死にそうになった。 とにかく、なんとかやり過ごさなければ。 「っごめんなさ、い、俺、ほんと、こんなつもりじゃなかったんですっ」 回らない頭で考えた結果、出てきたのは呂律の回っていない謝罪だった。 『なに?どうしたの、いきなり』 「バイト、辞めるとか、ほんとそんなことになるなんて思わなくて、さっきのあれは、おねがいします、なかったことに……━━っ」 「原田さん、焦り過ぎ」 言いかけて、くちゅりと音をたて司の舌が耳朶の溝を這う。 ひ、と言いかけた言葉ごと息を呑んだ。 「落ち着いて」 宥めるように優しく尻を撫でられた。 こんな状況で落ち着ける輩がいるならぜひ紹介していただきたい。 |