その男、愉快犯につきに 俺は今までにないくらい動揺していた。 いや、それは言い過ぎかもしれないが、まぁ、焦っていた。 「っ、ん、っう……くぅ…っ」 薄暗い室内。 司の上に跨されていた俺は、当たり前のように電話に出る司にぎょっとしていた。 慌てて止めようとしたが手も使えず、口を開いたら変な声が出てしまいそうで、文字通り手も足も出ないというあれだ。 しかも、そのくせ、手は止めない。 俺が固まっていると尻を揉まれ、腰を動かせとでもいうかのように撫であげてくる。 涼しい顔して、背筋が震え、胸をのけぞらせてしまえば司の鼻先が胸に近づき、そのまま裂かれた衣装から覗く突起に軽く唇を寄せられる。 ちゅ、と軽く吸われ、体内のそれをきゅうっと締め付けてしまう。 僅かに、司が微笑んだような気がした。 「どうせなら、俺よりも本人に聞いた方がいいんじゃないですか?」 代わりましょうか、となんでもないように電話口に続ける司は言い終わるなり持っていた携帯を俺の頬に押し付けた。 無機質な、嫌な感触。 「…ぅ、え?」 一瞬、状況が飲み込めず、目の前の司の仏頂面に目を向ければ「原田さん」と名前を呼ばれる。 「声、聞かせてあげれば。皆、心配してるよ」 わりと、仲間思いのいいやつなのだろう。 この状況じゃなければな。 もう一度いおう。 この状況じゃなければな。 |