感動の再会

『…はい』


コールが途切れ、受話器からはいつも以上に高揚のない時川司の声が聞こえてくる。
向こう側は酷く静かで、おそらく自室にいるのだろう。


「もしもし、司君?ごめんね、ちょっといいかな」

『ええ、俺は構いませんよ』


俺は?もう一人傍に誰かいるのだろうか。
含んだような時川の言葉が気になったが、あえて紀平は深くつっこまないことにする。


『それで、なにか』

「あーそうそう、あのさ、さっきかなたんから電話かかってきたじゃん。あの時、かなたんのあとに出た子の声って覚えてる?」


落ち着かない様子の店長となにか考えているのか、気難しい顔をした笹山の視線を浴びながらも、紀平は単刀直入に尋ねる。

そのときだった。
受話器の向こうから何かが大きく軋む音が聞こえた。
そのあと、わずかに時川の息を飲む音が聞こえ、紀平は勘づく。


『まぁ、覚えてますけど、そうですね…』

「特徴かなにか、あったら教えてよ」

『いいですよ』


即答する時川。
紀平が店長に視線で合図を送った時だった。
『でも』と、受話器越しの時川が言葉を紡いだ。


『どうせなら、俺よりも本人に聞いた方がいいんじゃないですか?』


『代わりましょうか』と、なんでもないように尋ねてくる時川の言葉を理解するよりも先に、当事者であるその人は受話器の向こうに現れることになった。
それは、紀平たちが予期もしなかった形で。


mokuji
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