ちょうどその頃

「あーあ、司君も帰っちゃったし暇だなぁ」

「仕事したらいいんじゃないですかね」

「うっ、なんだか急に腹が痛くなってきた」

「ならそのアイス俺が貰いましょうか」

「透、また一段と性格悪くなったねー…」

「心配して言ってるんですよ。もう六本目じゃないですか」

「だって暑いしねぇ」


仕方ない、と一人納得したように頷く紀平に笹山は微妙な顔をする。
まあ。本人が満足しているのならそれで良いのだろうが。
良いのだろうか。
もういい、この人に何を言っても無駄だ。
諦めた笹山は、紀平の向かい側の椅子に腰を下ろす。


「そういえば、店長はまだですか?」

「んぁ?…あー、そういや見てないな。まだ事務室の方いるんじゃない?」

「珍しいですよね、原田さんといい続けて人が面接に来るって」

「まーそうかもねえ。あ、でも透の時もそうだったじゃん。割と短期で」

「自分の場合は阿奈から誘われたんで、ノーカンじゃないですか」

「案外、今来た子もかなたんの友達だったりして」

「原田さんがこの店をご友人に勧めるようなタイプには思いませんけどね」

「やー、わかんないよ?自分の穴埋めかもしんねーし」


笑いながらアイスバーをしゃくりと噛じる紀平の言葉に笹山は硬直する。
そして、目を丸くして紀平を見た。


「……穴埋めって、なんの話ですか?」


mokuji
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