切り裂かれるのは

「じゃあ、動かないでくださいよ」


言うやいなや、俺のスカートの裾を掴み早速ハサミを入れようとしてくる司。


「ちょっと、おい、待った!」


下着が翔太の用意した女物の柄パンだということを思い出した俺は慌てて司を止める。
腰をひき、無意識に内股になってしまった。仕方ない。


「なに?」

「なにって、そんなにがっつりといかなくても」

「じゃあカッターがいい?」

「そういうことじゃなくて、ほら………なんかもったいないだろ」


不思議そうにこちらを覗き込んでくる司に俺はしどろもどろと反論する。
なんだか自分が変態かなにかのように思えてきて、いたたまれなくなったが言わずにはいられなかった。


「ああ、気に入ってるんだ。これ」

「きっ…そういうわけじゃねーけど」

「まあ、確かにもったいないな」


あくまで淡々と、当たり前のように共感してくれる司に俺はなんとも言えなくなる。
ここ最近翔太や四川に貶されてたからだろうか。
嬉しい半面こんなところで共感されても仕方ないと微妙な気持ちになる。
このままじゃ間違えなく司に女装マニア認定されるだろう。
それだけはなんとか避けたい。


「実はこれ、知り合いのやつが作ってくれたやつでさ」


ここまできたら素直に話した方が早い。
だから、あまり傷つけたくないんだ。
そういいかけたときだった。


「それって、さっき電話に出たやつ?」


静かに尋ねてくる司。
恐らく、先程翔太のとんでもない電話のことをいっているのだろう。
背筋に冷や汗が滲んだ。


「ん、え、まあ」

「へえ、よくできてるね」


言いながら、裾のレースに顔を近付ける司に驚いて一歩後ずさった。
結果的にただでさえ短いスカートの裾は引っ張られてしまい、そのまま司の視線は俺の股間に向けられる。
やばい、と俺は凍りついた。


「これも、その知り合いがしたの?」


下着のゴムをパチンとされ、肌を打つその感覚に「ぁっ」と小さな声が漏れた。


「いい趣味だね、その人」


そういうなりハサミを握り直した司はしゃきんとスカートに刃を滑らせた。
大きく切り裂かれ、亀裂が入ったスカートす下から覗くタイツ包まれた自分の足。
あっさりと切られる衣装。
無意識に自分の口から「あああっ」と他人のような声が出た。
なにをこれほどまで自分がショック受けているのか、そっちの方が驚いた。

mokuji
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