次から次へとやって来るのは

「あ、使えない店長おかえりなさい」


浮かない気分の俺をまず出迎えてくれたのは好んでは見たくない紀平の顔だった。
店内、事務室。
クーラーがガンガン利いたそこでやつは眺めていた資料をテーブルの上に乗せ、立ち上がる。


「誰が使えない店長だ、給料減らすぞ」

「かなたんとこに遊びに行ったんでしょ。どうでした?楽しかったですか?」

「…貴様のそのひねくれた性格はどうにかならんのか」

「ああ、結局会えなかったんですか」


クスクスと笑う紀平に我慢の尾が切れそうになったが言い返したところでこいつが調子に乗るだけだとわかっていたので大人な俺はスルーする。


「まあ、帰ってきたばかりで悪いですけど店長に仕事ですよ」

「なんだ」

「このあとバイトの面接、お願いします」

「なんだって?」

「さっき面接の電話がかかってきてたんで昼に来てくれって伝えときました」

「お前は、こんなときに限って余計な仕事をするな」


そう呆れたように続ければ、薄く微笑んだ紀平は「店長が暇そうだったので」と喉をならして笑う。
絶対こいつ楽しんでいる。
それがわかっただけに余計腹が立つ。


「ま、とりあえすお願いしますね」

「男か、女か」

「男です。あ、いっときますけどかなたんじゃないですからね」

「別にそんなことは聞いていない」

「本当はちょっと期待したくせに」


くそ、本当こいつ腹立つな。
にやにや笑う紀平を睨み、小さく舌打ちを漏らした時だった。

不意に事務室の扉が開く。
アルバイトの時川司がいた。


「店長、おかえりなさい」

「ああ。……どうした、帰りか?」

「ん、まあ」


そういう時川は私服に着替えていて、すでに帰る準備をしていた。
どうせ今日は人手も足りているし引き留めるとつもりもなかった。
しかし、時川の方は俺に用があったよ
うだ。

「それと、」


そう言いかける時川に「どうした」と促したとき、時川の背後からひょっこりと笹山が顔を出した。


「店長、面接の方がお見えになっています」


そんな笹山の言葉に紀平が笑った。
本当、こいつの笑い声は癪に障る。

mokuji
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