監禁系拘束ウェイトレス

突然だが俺の親友(過去形)は都内に所有する複数のマンションの部屋を用途別に複数借りている。
そして、今俺はそんな親友が借りている洋裁部屋にいた。
部屋全体がコスプレ衣装やその製作に使われる布や資料で埋まった一室、唯一翔太が仮眠につかう比較的まともな部屋の中。
床に転がされた俺はそのまま壁の方を見ていた。
ぎし、と小さく床を軋ませ一つの足音が近付いてくる。


「好きなものを食べさせてしたいことをやらせて欲しいものはプレゼントしてなに一つ不自由なく生活させてきたつもりだったのにどこで間違えたんだろうね、カナちゃん」


穏やかなくせに皮肉が織り混ぜられた刺々しい友人もとい中谷翔太の問い掛けに「それはお前が変な性癖拗らせたせいだな」とそっぽ向いたまま答えれば、立ち止まる翔太は「それは手厳しいな」と控えめに笑う。


「僕さ、考えたんだ。頭でっかちで後先考えずに突っ走っては毎回毎回何度も失敗を繰り返すカナちゃんの悪い癖がどうやったら治るか」

「その結果がこれか」

「うん、すっごい似合ってるよ。カナちゃん」


俺の前に屈み込み、わざわざこちらを覗き込み微笑む翔太の顔面をぶん殴りたかったが生憎手首を拘束する手錠がそれを邪魔してままならない。

動けば動かす度に腿が剥き出しになりそうなくらい短いフリルのスカートに、ムカつくくらい体にフィットしたオレンジ地に黄色のチェックが入ったワンピース。
その上から着せられた愛らしいフリルまみれのエプロンにはご丁寧に『カナ』とプリントされた安っぽいネームプレート。頭にはエプロンとお揃いのフリルのカチューシャ。


「ファミリーレストラン『ラ・ノエール』の女性従業員用制服。流石僕。完璧な仕立てだ」

「つーかなんだよそのラ・なんたらって」

「つまり僕オリジナル」

「意味わかんねえし」

「ああ、ごめんねカナちゃんみたいなおバカさんにはちょっぴり難しかったかな」


こ、この野郎。
目の前の翔太を睨めば、相変わらずニコニコと笑う翔太は俺の首に手を伸ばし、そのまま鎖に繋がった首輪に触れる。


「カナちゃん、前僕と約束したこと覚えてる?」

「…約束?」

「『もうお酒は飲みません』。カナちゃん、そう言ったよね」


じゃら、と柱に繋がった鎖が音を立てる。
笑みを浮かべる口許とは裏腹に笑ってない翔太の冷ややかな眼差しに俺は凍り付いた。

mokuji
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