金か貞操か 「どうする原田、お前にやる気がないならこのまま逃がしてやろう。やる気があるならこれを舐めろ。どうだ、分かりやすくていいだろう?」 「……っ」 二者択一。 確かに分かりやすいが、分かりやすいけど、どちらか片方を選んでも俺の気が収まらないのは間違いなかった。 あまりの怒りに逆上せ上がり、平常心を失いかける自分を冷静になれと宥める。 そしてゆっくりと目の前の店長に目を向けた。 「いくらだよ」 「あ?」 「人のケツ使うんだから金払うつっただろ。いくらって聞いてんだよ」 そう、必死に怒りを押さえ付けるように唸れば店長はふっと笑う。 「そうだな、その財布ごとやろう。お前には勿体ないブランドものだぞ?泣いて喜べ」 「即質屋に入れてやる」 そう吐き捨てるように呟けば「口だけは達者だな」と店長は愉快そうに喉を鳴らして笑う。 そして、ディルドを拾い上げその尖端を俺の唇に押し付けた。 ぷに、と固めの感触が触れる。 「財布をどうこうするのは仕事を済ませてから考えろ」 その店長の言葉にゆっくりと目の前の男性器を模したそれに向けた俺はぎゅっと目を瞑り、そのまま亀頭に唇を寄せる。 「ん……っ」 弾力性のあるゴムにゆっくりと舌を絡ませ、目の前の店長を見上げたとき小さく開いた咥内にそれを捩じ込まれる。 「ふ、んく……ッ」 「しっかり濡らしておけ。自分のケツに入れるんだからな。裂傷を作りたくなければみっともなく顔を歪め犬のように唾液を垂らし丹念にしゃぶっといた方が身のためだ」 相変わらず上から目線の偉そうな店長に息苦しさで眉を潜めた俺は「うるひゃい……っ」と唸った。 そして、言われるがまま頭を動かし喉奥までディルドを飲み込み、たっぷりと唾液で濡らした舌でイボがついた全体に絡ませる。 「んっ、ぅ……ッ」 舌を動かせば口の中でくちゅくちゅと水音が立つ。 無味無臭の造物とはいえ、今更ながら自分がとんでもないことをしてることに気付いた。 しかし、ここまできて引き下がれることも出来ない。 「ぷはっ」 唾液でたっぷりと濡らしたそれから口を離し、ディルドから糸を引く唾液を舐めとる。 ぬらぬらと光る肌色のそれはどうみても勃起した男性器そのもので変に意識してしまいかなり恥ずかしくなってきた。 そして、赤くなる俺に気付いたようだ。 店長は笑う。 「ふん、そんなに痛い目に遭いたくないのか」 そして、言いながら人の下半身に手を伸ばした店長は器用にベルトを緩める。 「血を流して泣き叫ぶ貴様も見てみたかったがまあいい。その努力に免じて優しくしてやる」 当たり前のようにズボンを緩めてくる店長にそのまま下着ごと脱がされそうになり、焦った俺は咄嗟に足をバタつかせた。 「は、ちょ……っ待ってください、自分でやりますから……ッ」 「遠慮するな。使い方がわからなければものの良さを感じることも出来ないだろう。手伝ってやる」 「いいです!いいですから!……ちょッ、や、待っ、店長……ッ!」 言ってる側から下着ごと膝上までずり下げられ、嫌な風通しのよさに血の気が引いていくのがわかった。 慌てて無理矢理露出させられた下半身を手で隠すが、構わず店長に太股を掴まれ強引に開脚させられる。 嫌な音を軋む股関節。 昔から体の固さには定評がある俺はあまりにも無理矢理すぎる店長の動作に堪えきれず、咄嗟に人の股間を覗き込むその小綺麗な顔に蹴りを放つ。 間一髪のところで足首を掴まれた。 しかし店長の逆鱗に触れてしまったようだ。 「おい、暴れるな!俺の綺麗な顔が傷付いたらどうするっ」 先ほどまでの余裕はどこへ言ったのか怒鳴りながら無理矢理足を持ち上げさせてくる店長に俺は「自分で言わないで下さいよっ!」と叫んだ。 店内に比べて明るい照明の下。 服の裾を伸ばしなんとか下半身を死守しようとする俺だったがキレた店長によりあっけなく引き剥がされる。 「っあ、ぁあ……ッ」 ぶるんと飛び出す半勃の性器。 普段人に見られないような場所までまじまじと見詰められあまりの恥ずかしさで死にそうになる俺はねっとりと下半身に絡み付く店長の視線に堪えきれず腕で顔を隠す。 その矢先だった。 机の下でガチャガチャとなにか取り出すような音が聞こえてきたと思った瞬間、外気に晒されたそこにどろりとしたなにかが垂らされる。 「ひッ」 慌てて目を見開けば、肛門を中心にぼたぼたと下半身を濡らしていくのは透明の液体で甘いフルーツの香りが辺りに充満する。 ローション、なんて知識ばかりの単語が脳裏を過った。 ってそれ使うのかよ。 わざわざ頑張って舐めた意味ねーじゃん! |