未奈人×原田/監禁/スパンキング/続きます


どこで間違えたのだろうか。
なんて今更考えて見るがどこまで遡っても過ちだらけの人生だった気がしてならない。
寧ろ、間違えたのは俺の方ではなく『あいつ』の方だろう。


ようやく家を出て自立できたと思った矢先、俺を追ってやってきた『あいつ』の手によって俺の夢のような自由な人生は強制的に終わりを告げさせられることになった。

都心のマンションの最上階、いつ借りたのかその部屋の一角で俺は転がされていた。
それはもう雑に、ころころと。勝手に逃げ出さないようにとご丁寧に首輪とリードまで付けて。
これでは本当に室内犬かなにかだ。寧ろ室内犬の方が可愛がられてる自信がある。

手足は自由ではあるが、首輪のせいで部屋から出れないようになってる今あいつが帰ってこないと俺は何もできない。
そろそろか。腹時計であいつの帰宅時間を確認してると、ビンゴ。足音が聞こえてくる。

そして、


「佳那汰、今帰ったぞ」


シワ一つない嫌味のようなスーツを着たアイツもといクソ兄貴様のご帰宅に俺は布団を被る。
あいつの顔すら見たくなかったのでそのまま無視決め込めば、「おい、佳那汰」と兄が近付いてくる。
そして、問答無用で被ってた布団を取り上げられた。


「佳那汰、ただいまの挨拶がないとはどういうことだ。いつも言っているだろう、俺が帰ってきたときは『お帰りなさい、お兄ちゃん…』と上目遣いで……ッ!!」


言い終わる前に、俺は近くに転がってた枕を兄に向かって投げつける。が、顔面直撃する前にそれを受け止めた兄にぎょっとする。

この至近距離でなんだその反射神経は?!化物か?!いや化物ではあるが!


「…………ほぉ…これはどういうつもりだ、佳那汰」

「ど……どういうつもりかはこっちのセリフだ!…っこんな、こんな場所に閉じ込めやがって…早く家に帰せよ!」

「……まったく、まだ分かっていないようだな。…ここが俺と佳那汰の新しい家だと、この間何度も教えたはずだが?」

「わかるか!…む、無理矢理連れてきて、おまけに一歩も外に出るなってっ?そ、そんなの…」


監禁調教AVと同じシチュエーションじゃねえか!

これが観る側なら全然そりゃあもう捗るが、当事者となると全く笑えない。寧ろ関係者各位にオカズにシコってごめんなさいって謝りたくなるレベルだ。

けれど、この頭のネジぶっ壊れた兄にはそんな俺の気持ちなんて理解できるはずがない。そう、ないのだ。


「誰のためにここまでしてやっていると思ってるんだ?…向こう見ずで世間知らず、そのくせ流されやすく騙されやすい………寧ろここはもっと感謝されるべきだろう、取り返しのつかなくなる前にこうして俺がお前を捕獲してやったんだから」


恐ろしいほどに話が通じない、それどころかこの自分が正しいと疑いすらしない不遜な態度に俺の方が間違ってるような気になってしまうのだ。
……いけないいけない!これではいつもと変わらない、またこの兄のペースに飲まれてしまう。


「ふざけ……っん……っ!」


ふざけるな、と拳を握りしめたとき。
伸びてきた手に顎を捉えられ、無理矢理兄の方を向けさせられる。
ベッドは二人分の体重に軋んだ。


「……口の聞き方といい、まだ躾が足りんようだな」

「離せ……っ、この…過保護!ブラコン!鬼!」

「しっかり防音が利いてる部屋でよかったな。……でなければ、お前の声は煩すぎる」

「っ、な、ぁ……ちょッ、離せ!」


この、と手足バタバタして抵抗するがこのクソ兄貴、可愛い弟の頭を思いっきりベッドに押し付けてくる。視界が揺れ、強制的に仰向けに寝転がされる。
起き上がろうとするが、頭を押さえつけられればびくともしない。


「んぎ……ッ!」

「離せ、ではないだろう。離してください、お兄ちゃん。……さあ、言え」

「だ、れが…っ」


言うか、この腕力ゴリラ。
筋力とは無縁そうな小綺麗な顔してるくせに昔から腕っぷしがバカみたいに強く、おまけに兄弟喧嘩(という名の俺の細やかな抵抗)でも毎回泣かされていた。
そして、生まれてこの方自慢ではないがこの兄に一度も勝てたことがない。
それでも、それでもここで諦めたらいけないのだ。
それだけはわかっていたから俺は言いなりになるのをやめた。

そんな俺の態度が気に入らないのだろう。
ふっと息を吐き、兄はネクタイを緩める。


「……仕方ない奴め。……その頭に直接一から兄への礼儀を叩き込む必要があるようだな」

「退けっ、この……ッんがッ!」


そして、罵倒し倒してやると開いた口に指を捩じ込まれる。
硬い指先は俺の口を歯を抉じ開け、口の奥で窄まっていた舌を無理矢理引き摺り出した。


「汚い言葉を覚えやがって……ッ!中谷君には厳重に注意させていたはずだが……?やはり、あの店のせいか……ッ!まるで教育がなっていない!」
 
「っ、はな、ひ……ッ」

「佳那汰。…お前が汚い言葉を吐く都度、お前に痛みを与える」

「っ、ぁ、ふ、……っ」


舌に指を立てられ、閉じたいのに閉じれない口から唾液が溢れそうになる。
くそ、と兄の指にガジガジと歯を立てれば、舌打ちをした兄は俺の口から手を引き抜く。


「っ、やめ……ろ……っ!」


そう、睨みつけた矢先だった。
兄の眉がぴくりと釣り上がり、目の色が変わる。


「やめろ、だと?」


やべえ、この目はわりとガチめにキレてるときの目だ。
そう察したときには時既に遅し。
身体をひっくり返され、そして、着ていた寝巻き代わりのスウェットを下着ごと思いっきりずるっと脱がされる。


「やっ……おいっ、なに、待って……っ」


なんで脱がすんだよ?!と慄くのもつかの間。
丸出しのケツを恥じる隙もなく、剥き出しになったそこを思いっきり引っ叩かれる。
瞬間、乾いた音ともに襲いかかる鋭い痛みに堪らず飛び上がった。


「ひ、ぃッ!」

「……やめてください、お兄ちゃんだ。佳那汰、もう忘れたのか?お前のこの脳味噌は……ッ!」

「っ、ぅ、あ……っこの……ひぅッ!」


痛くないようにしてくれてるのかもしれないが、この年にもなって兄にケツを叩かれるという地獄絵図。
その事実だけでもキツイのに、ケツまで鍛えてない俺にとってそこは弱点に等しい。



「………誰に向かって口を聞いている、佳那汰。早く素直にならなければここに恥ずかしい痕が残ることになるぞ」

「い、や……め、ぇ……っ」

「『お兄ちゃん、ごめんなさい』だ、佳那汰。言ってるだろう。お前がちゃんと俺の言うことを聞けばやめると。……お前が強情張ってる間はお兄ちゃんも辞めないからな」


一旦叩くのをやめたと思いきや、叩かれて敏感になったそこをそっと撫でられ、寒気にも似た感覚が内臓から背筋に向かってゾゾゾと這い上がっていく。

これ以上は、まじで洒落になんねえ。
別の意味で熱を持ち始める下半身。痛いだけなのに、なんでだ、まじでどうなってんだ俺の馬鹿チンポは。


「っ、は……いや、やめろ……んぅうッ!」

「……わざとやっているのか?俺に構われたくて、わざと俺を怒らせているとしか思えないな」

「んな、わけ……ッぅ、ひィ……ッ!」


何度目かのスパンキングから逃れることができず、堪らず俺は枕にしがみついた。
痛いというよりも熱くて、じんじんと痺れる。
泣きそうだ。というかちょっと泣いていた。


「も、や……叩かないで……っおに、いちゃ……」


何も変わってない。あのときからずっと兄が怖い。
俺も大人になればこの恐怖に打ち勝てるのだろうと思ってたが、実際はどうだ?
兄に怒られて泣いていたときとなんら変わらない。
それが悔しくて、余計凹みそうだった。


「佳那汰……お前は」


吐息混じり、背後から聞こえてきた兄の声は僅かに柔らかくなっていた。
そして、兄の手が臀部に触れた瞬間、びっくりして身体が震えた。
叩かれる、と身構えたが、兄の手は腫れたそこを労るように優しく皮膚の上を這うばかりで。


「っ、ぁ、や、ぁ……ッ」

「図体だけでかくなって……中身は何も変わらないな。佳那汰、お前はいつでも俺の手を煩わせる」

「っ、や……っ、んぅ……ッ」


撫でられてるだけなのに、兄が変な触り方をするせいで出したくもない声が喉の奥から溢れ出す。
これならまだ、叩かれた方がましだ。
兄の手から逃れようとベッドの上這いずり出そうとすれば、首根っこを掴まれ呆気なく戻される。
ケツ丸出しの今上を向かされれば勿論前も丸出し名わけで、悲しきかな単純なこの身体は少しの快感でも大いに勃起するようだ。

兄はそれを一瞥し、鼻で笑う。


「本当に、お前は……」


仕方ないな、とでも笑うかのような優しい目が余計恥ずかしくて、「見るな、馬鹿」と兄の目を隠そうと出を伸ばせばそれごと捉えられる。
そして。


「や、め……ぅ、んん…ッ!」


兄の顔が近付いてきたと思った瞬間、唇を塞がれる。
柔らかい、薄皮越しに伝わるその体温の熱さにびっくりして俺は抵抗するのを忘れていた。


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