望郷。 | ナノ

3−3


……静かに、しずかに。
薄墨のような暗がりが、更けてゆく。


『……ひずみは失せ、正された』

「……この、愚かな婢女はしために……断罪を」

『あなたは罪過を背負って生きていた。安らぐことのない無限を』

「……終わりが?」

『いいえ、始まりよ』


身体が、ふわりと浮かぶ。眩い、光が………





◆◆◆◆





はたはたと、液体が頬を伝う。あたたかい。


橙を帯びた、ほのかないろ。気が付くと、やわらかな白色のなかにいた。……あたたかな、いろ。
ぴ、ぴ、ぴ……静かな電子音。
右も左も分からない。

ただ、何か……あたたかいものが。この手を、すっぽり包んでいる。

意識の浮かんだ無言しじまの時、そのぬくもりが人間であることを知った。……揺れる気配が、泣いているということも。

……あぁ、わたしが馬鹿だったよ。


(ごめんな、ごめん、ごめん……)


……ああ、これは、
いとしいひとだ。この世界でたった一人の、何より大切な。

いとおしい、いとおしいひと。


(…ペル……)


意識はまた、しずかに……ぬるま湯の中へ………


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