───どうして、子ができないのだろう…
一巡目。彼と私が子を成すことはなかった。……ずっと、故郷への焦燥が先立っていた。
二巡目。分かったのは、私たちに子種が存在しないということ。
三巡目。巡り合わせの不運だろうと、再び出会って笑いあい……そして、現実に泣き崩れた。
四巡目。……もう、涙も出なかった。
───どうして………
問い掛けは、鏡のようにこの身へ戻ってくる。
───どうしてそんなに、子を望む?
王の言葉が、蘇る。
……どうしてか。
決まっている。それは、それは………
隠され、散らばった欠片が……嵌め直される。
あまりに歪な、捻じれきった真の姿へ。
「あ、あぁ………」
息を、止めた。
見えてしまう。覆いの下の全てが。
……刹那の時に、死を望んだ。
かえれないなら。消えてしまいたい。今、ここで。
見てしまった。あれを。己を。
───違う。
子を望んだのではない。還りたいのではない。
欲しい、のだ………
───醜い。
◆◆◆◆
「………ほしい、のです……ほしかった、」
……ただ、確かなあかしが。
なにが
現で、なにが虚無かも分からなかった。
だから。手の中にあったそれを……確かな証として、抱いていたかった。
「子を成すことも、還ることも……その証を得る為の、手段でしかない」
一つだけの、ぬくもり。
………いとおしい、ひと。
「たった、ひとつだけだった……」
ひとりだけ、だった。
右も左も分からない、この異郷の地。そこで出会ったのは、誰よりいとしいひとだった。
一度目の時、恐るものなんてなかった。だって、隣にはあのひとがいた。
……でも、二度目は?三度目は?故郷の幻想は、どんどんと遠のいてゆく。やがて、あのひとは諦める。
そうしたら…?
「失うことがおそろしくて、おそろしくて……」
あのひとは、この世界で生きていく。故郷を捨ててしまえば、わたしとの繋がりは何もなくなる。
だから、ふるさとへの焦がれは……決して諦めてはならなかった。諦めさせては、ならなかった。
……でも、もしも故国が見つからなかったら?
あのひとは、離れてゆく。
……ならば。
ならば、血を残せばいい。互いのまざって出来上がり、ひとつに完成したものを。
自分たちの子孫の血で、わたしたちは確かに繋がっていられる。たとえ、この身を突き放されても……何処かに、あのひとの残滓が残る。縋っていられる。
……そのためだけに。
「死すら、安らぎではないこの世界に………」
あのひとの、いない世界なんて。
おまえの、いない世界なんかに。
何の意味も無いんだ。
此処でも、
彼処でも。
おまえだけなんだ
「──、」
名前を、呼んだ。
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