望郷。 | ナノ

2−6


どうも、熱が出ているらしい。


『異常体温。異常体温。医療機関への受診をお勧めします。』


銀色の機体がぴこぴこと鳴りながら、背後をうろちょろする。
……この喧しさ、誰かとよく似ていた。


「……うるさい」

『近くの病院を予約しますか?』

「……キャンセル」

『前回摂取より三十分経過。水分補給です。』

「………」


寡黙な助手である筈のアンドロイドが、じつに煩い。以前はもっと、控えめな設定だったのに。
……あの男のお節介は、ウイルス性なのだろうか。





◆◆◆◆





……これは、結構まずいかも知れない。

体調悪化から何週間かして、ようやくその結論に至った。
とにかくベットから起き上がることが出来ない。アンドロイドが言うには高熱らしい。


「……インフルエンザ…?」

『医療用検知アクセサリは未装備です。判断できません。』

「……そっか………」


まずいな。ふわふわする。





◆◆◆◆





……もう三回目にもなると、「はやく終わらせてくれ」程度の感想だ。
相変わらず体は動かない。さて、今回は誰だ。


『……昔から思っていたけれど、ほんとうにおっちょこちょいなんだから』


緩慢に構えていた意識が、一気に覚醒する。息が、荒くなる。

……嘘だろう。いや、冗談でしょう…?


『もう……一人で何処までも走って行っちゃうの、何とかしなきゃダメよ?』

「………ビビ様…?」


うら若き女人の声は、苦笑するふうに肯定した。


望郷-中編【終】



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