どうも、熱が出ているらしい。
『異常体温。異常体温。医療機関への受診をお勧めします。』
銀色の機体がぴこぴこと鳴りながら、背後をうろちょろする。
……この喧しさ、誰かとよく似ていた。
「……うるさい」
『近くの病院を予約しますか?』
「……キャンセル」
『前回摂取より三十分経過。水分補給です。』
「………」
寡黙な助手である筈のアンドロイドが、じつに煩い。以前はもっと、控えめな設定だったのに。
……あの男のお節介は、ウイルス性なのだろうか。
◆◆◆◆
……これは、結構まずいかも知れない。
体調悪化から何週間かして、ようやくその結論に至った。
とにかくベットから起き上がることが出来ない。アンドロイドが言うには高熱らしい。
「……インフルエンザ…?」
『医療用検知アクセサリは未装備です。判断できません。』
「……そっか………」
まずいな。ふわふわする。
◆◆◆◆
……もう三回目にもなると、「はやく終わらせてくれ」程度の感想だ。
相変わらず体は動かない。さて、今回は誰だ。
『……昔から思っていたけれど、ほんとうにおっちょこちょいなんだから』
緩慢に構えていた意識が、一気に覚醒する。息が、荒くなる。
……嘘だろう。いや、冗談でしょう…?
『もう……一人で何処までも走って行っちゃうの、何とかしなきゃダメよ?』
「………ビビ様…?」
うら若き女人の声は、苦笑するふうに肯定した。
望郷-中編【終】
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