望郷。 | ナノ

2−3


ういん、ういん、ういん、


機械音に、重怠い目蓋を上げた。
見れば、銀色の機体が背後にいる。こちらの肩へ毛布を掛けて、下がるところだった。
……こんなプログラミング、しただろうか。


(……最近のメーカーは……自動でアップデートしてくれるのか)


デスクの上から体を起こして、首を回す。
ごきりごきりと、嫌な音。


(……夢…)


……きりきりと、胃が痛んだ。
口の中は乾いていて、僅かにべとつき気持ちが悪い。


「……嫌な夢だ…」


気が滅入って、ふうと息を吐く。目の痛みが、重い頭痛に変化していた。

明晰夢。金縛り。
不規則な生活を繰り返し、浅いレム睡眠を途切れ途切れに取ると起こりやすい症状だ。
……最近、少し根を詰めすぎただろうか。煩い男の言うように、休むべきかもしれない。

やれやれと、立ち上がり。仮眠室へ向かおうと、スリッパを突っかける。
……ふと、背後を振り返った。


「…………」


……部屋のすみ。そこには、アンドロイドが一体あるのみ。物静かに自動充電をしている。


「……さっき、誰か来たか?」


馬鹿らしいと思いつつ、銀色の機体へ問い掛ける。


『いいえ。そのような記録はありません。』


アンドロイドは、その頭を……なめらかに輝く、円盤のような形だ……それを、くるくる回しながら答えた。
表情の代用か、中央に一つだけ付いたダイオードが点滅する。


「……そうか」


我ながら、馬鹿なことを聞いたものだ。


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