金泥(3)
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03.
蒼々と晴れたそら には白やかな雲が浮く。
──…あかるい挽歌 が、甲板に流れた。
──ユモレスク『第七曲』。
──古いレコードがぜろぜろと鳴る。曲調はふいに変わって、陰鬱なセロ。
藍青 色 の洋上を、かすれた音が流れていった。
──…腕の中の赤児 が、ひわひわと泣く。弱々しい、声なきこえ で──…。
溟 い音におびえたらしい。
「おお、よしよし……」
しかし、レコードが、あかるい調子の部分になると、けろりと泣き止む。曲の調子が溟 くなると──…同じことの繰り返し。
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「──…大きくなったら、また 行きましょう。あのきんいろの海岸へ。」
男は、つぶやいた。低く、美々しく、ぶきみな声で──…。
「……前のきみ との約束ですから」
吐息が掠 れる音を吐き、ちいさな嬰児 はむずがった。
──おさな児 の肉声が少しも聴こえてこないのは、いつものことだった。
まだ、彼女が、原形個体 だった──…とおいむかしの頃から、その声帯は壊れている。
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「──…きみが、たとえ、
覚えていなくても──…」
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──…以前の個体は、数月前に行動期限 を迎えた。
ひと肌にぬくもった硝子 壜 ──…。その底から生えてきたばかり の赤児を腕 に抱いて──おとこは、ひとり、海風に頬 を擦 る。
「──…わたしは、ずっと、」
(……憶 えているよ。)
──ラフィットは、しずかに謡 う。
葬送行進曲──その、あかるい挽歌を──…。
fin.
『WORD PALETTE』
金泥
(きんでい ──膠 で泥状に溶いた金粉。)
『挽歌 』『歩 ぶ』『海霧』
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はるばるG T まで行き碌にカジノへも行けずお子様とスポ○ジボブ観てお子様の溶けたアイスたべて帰ってきたラフィおじさん…
(商談はした。)
(観光もした。)
(接待カジノはお子様にクソクソ邪魔された)
↓(スクロールであとがき)
2021.01.31
お久しぶりのラフィおじさんのおはなしでした。2020年の11月ごろTwitterでUPしたものです。
前回のシリーズと続きものと言えば続きものですが、単品でも読めるものです。
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タイトルとお題は自作のワードパレットより。以前Twitterにてキャラ指名募集をしたリクエスト品です。(現在は募集を休止しております)
爪さま 納品がめちゃめちゃ遅くなってしまい 申し訳ございませんでした…(約2年)(2年?!?)
今回のラフィおじさんの お靴の種類と色のコーディネート監修は 革靴有識者の爪さまにして頂きました…。
サドルオックスフォードシューズ…!1人では知り得なかったすてきな靴をご紹介頂き…本当にありがとうございました…! 美しい…(ぜひ画像検索してみてね!)
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ワードパレットとは…二、三年前…に…流行った…あれです…タイトルと三つの単語でやる…小説版カラーパレットみたいなやつ…。(作ったはいいものの 筆が遅すぎて 小説書き上がる頃にはとっくに流行が終わっていた…)
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このラフィおじさんシリーズは今後もポツポツ書けていけたらなあと思います。
前回は日和りすぎたかなーと思ったので 今回はやや(やや)ラフィおじさんチックなお話になってよかったです…。
このシリーズ、現在もう一つ、書きかけのお話があるのですが…いつか完成するといいな…(途中のままテキストライブに放置しています…)
話数がもう少し増えてきたら 拍手ではなくシリーズ短編ページを作ってお引越しさせる必要があるかなあと思います…(未定)
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