SSS『黒薔薇』
2014/07/23 10:05









「ねーえドレーク!」
「………何だ」
「何よ!その嫌そうな顔!」
「……どうせまた、下らん事で騒ぐんだろう…お前と話していてもろくなことがない……」
「あっ!ドレーク!ひどい!!私泣いちゃう!泣いちゃうよ?ねえドレークー!本読まないで、私のはなし聞いてー!!」
「……分かった、分かったから首を揺さぶるな、折れる、外れる、死んでしまう……お前自分の握力自覚してるのか」
「あのねあのね」
「話聞け」


「黒薔薇って、知ってる?」


「………聞いたことがある。何処かの国で、夏だけ開花する珍しい色の薔薇だろう…」
「そう!このまえ本で読んだの!」
「…はあ……」
「それでねそれでね!その薔薇の写真、とっても綺麗でほんとに黒いの!」
「……………」
「…ねーえ、ドレーク、」
「………何だ」
「黒い薔薇の花言葉、知ってる…?」
「"恨み、憎しみ"」
「………うり? なんで知ってるの?」
「……俺の部屋から勝手に持ち出した風土記だろう、それ…」
「…あー!そっかー!!それじゃあドレークも知ってる訳かー!」
「……馬鹿か、お前は…」


「ならさ、もうひとつの花言葉も知ってるよね。」


「…………ああ」
「私もね、知ってるよ」
「…そうか」
「"貴方はあくまで私のもの"」
「…………」
「ねーえドレーク、わたし、黒い薔薇が何本か欲しいなあ…」
「…早々、手に入るものでは無いぞ」
「ねえドレーク!じゃあさ、もしも、もしもそのお花を見つけたら…」
「…見つけたら?」
「わたしに頂戴!」
「………それで…?」
「そうしたらね、わたし、その薔薇で花束を作って、ドレークにあげる」
「……………」
「うふふ、ねえ、とっても素敵な考えでしょう?」



「ねーえドレーク。わたしたち、ずっとずっと、一緒だよね?」





(そう笑んだあの顔の、何と無垢で残酷な)






「…………ああ……そうだな…」





(そんなお前が、いとおしくてならないよ)




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