SSS『愛鳥週間』
2014/05/16 02:32






「…なあ、ペル」
「どうしたチャカ。」
「最近随分と遅くまで兵舎に残っているようだが…どうしたんだ?」
「ああ、幾つか片付けなくてはならない仕事があってな…大したことはない」
「あまり眠っていないだろう…顔色も悪い。無理はするなよ」
「…ありがとう。大丈夫だ」
「書類なら幾つかこちらに回せ。少しは楽になるだろう」
「…いや…そちらに負担を掛ける訳には…」
「なに、そう気張るな。早く帰ってあいつの相手をしてやれ。それが甲斐性というものだ」
「…む、いや、それは……」
「あれでいてあいつは天邪鬼だから、存外寂しがっているだろうよ。こちらの事は平気だから…良いな?」
「……分かった。済まないな」
「なに、気にする事はない」




「ねえ、ペルー!」
「…おや、ビビ様。どうかなさいましたか?」
「さいきんパパとかイガラムにいじめられてない?」
「…? いえ、とても良くして頂いておりますが?」
「そう?ならいいの! でもなにかあったらいってね!わたしがこらしめてあげるから!」
「ははは、滅相もございません。」
「ペル、いっつもがんばってるからね!あたまなでなでしてあげる!しゃがんで!」
「おや、ありがとうございます」




「なあ、ペルよ」
「何でしょうか国王」
「なにか欲しいものなどはあるか?」
「…? いいえ、特には。」
「…ゴホン、ペル…お前は最近働き過ぎた。…休暇でもやれれば良いのだが…」
「イガラムさんまで…いえ、お気遣いはありがたいのですが、大丈夫です」
「…む、そうか…」
「…急にどうかなさったのですか、御二方?」
「……いや、何でもないのだ、何でも。」
「何か困ったことがあったら言うのだぞ」
「…はあ…ありがとうございます」
「今日は早めに帰って良いぞ」
「…はあ…どうも…」




(最近みんな妙に親切だが…一体どういう訳だろうか…)

週間
5.10~16





「ただいま」
「……む、お帰り。早かったな」
「いや、何だか今日は皆おれに気を遣ってくれてね…ありがたかったが少し、申し訳なかったよ」
「……そうか…ふむ…まあそうだろうな…」
「? どうかしたのか?」
「いや、何でもない。」
「…それよりおまえ、エプロンなんか着けて…一体どうしたんだ?」
「うん、今日は私も早引け出来たから、ペルに何か作ってやろうと思ってな。…食べたいものとかあるか?」
「?! …作るっておまえ…料理なんかできないだろうが…(いつかだって、台所が大惨事になっていたし…)」
「………二月にやった菓子もどきの事は忘れろ…」
「………、(あの黒いの菓子だったのか…)」
「あれからテラコッタさんに習って、少しはましになったんだ…」
「そ、そうか…」
「そんな疑いの目で人を見るな。
…折角、暦に則って労ってやろうと……いや、もういい、何でもない」
「待て待て、拗ねるな、悪かった!」
「………まあ、良いだろう。」
「?!(……妙だ…尋常でなく素直だ…!)」
「座って待っていろ。」
「……ああ…(妙だ……)」


今日は天邪鬼な恋人が珍しく素直で可愛いので大変幸せだったが、このあと滅茶苦茶焦げを食わされた。


※本人にきっと悪気はない。




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