SSS『Xmas』
2014/12/06 22:22

「やあ諸君! アラバスタ王国国王のコブラだ! これから第一回アルバーナ宮殿クリスマスミッションを開始する! 今回のミッションは初にして難易度が高いぞ! 真夜中のビビちゃんの寝室へサンタに扮した私とパーティメンバーがこっそり突入、ビビちゃんがサンタへ宛てたお手紙を気づかれぬよう回収するというものだ!
因みに現在時刻は零時を回ったところ! ここで頼もしいパーティメンバーを諸君に紹介しよう!」

「……その一、国王のお戯れに無理矢理付き合わされる護衛隊隊長ことわたくし、イガラム」

「無理矢理って何だよイガラム、お前も何だかんだ言ってノリノリじゃないか。何だその赤い鼻は!トナカイか?」

「うっさいな赤鼻は元々だよ! そういうアンタこそ何ですかその真っ赤な衣装は!」

「サンタのユニフォームに決まっておるだろう!」

「何処で手に入れたんですかそんなもの」

「テラコッタさんに土下座して作ってもらった」

「一国の王が簡単に頭下げないの!!」

「うっさいなビビちゃんの為だけだよ!!」



「……さて、話は逸れたが続けてパーティメンバーを紹介しよう!」

「なんで国王こんなにテンション高いんだか……」

「次のメンバーは隊長副官チャカ! なんか暇そうにしてたから連れてきたのだ!」

「………はい…」

「…ゴホン。因みに暇そうというのは国王の主観的独断であり、彼の家では女房が一人寂しく彼の帰りを待っています。酷いですねうちの国王は」

「えっそうだったのごめんチャカ! はい次!」

「……………」

「……反省の色なしですね。大丈夫だチャカ、きっと残業代は出る。
…ゴホン。えー、次。同じく隊長副官ペル。彼は決算明けで家にいる我が娘といちゃつこうと、嬉しそうに家路に着いているのを見つけた私がなんかムカついたので連れて来ました。馬の骨に娘はやらん」

「………はあ…」

「えーっ、イガラムこそ酷いのう! 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ぬんだぞ」

「そんなこと言ったって国王、考えてもみて下さい…もし、ビビ様がある日男を連れて来たら…………」

「消す。」

「それが正しい父親の判断なのです、お判り頂けましたかな?」

「ならば仕方あるまい、どんまいペル」

「…………」


「と、言うわけで野郎だらけのメンバーは以上! いざ、ビビちゃんの寝室へレッツゴー!」



「しーっ、しーっ!」

「騒ぐな騒ぐな!!」

「しーって言ってるでしょう国王!大きな声を出さない!」

「イガラムお前こそうるさいぞ!!静かにせんかビビちゃんが起きちゃう!!」

「なんですってぇアンタこそ…!」

「………お二方」

「文句があるなら付いて来なくていい!私一人で行った方がスマートだ!」

「呼んだのアンタでしょう!! それに、私だって気になりますよビビ様が何をおねだりなさったのか!いけませんか!!」

「……お二方、お静かに」

「邪魔!!!」

「あんたこそ邪魔!!!」

「国王、イガラムさん、ビビ様がお気付きになられます」

『うるさい!!』

「……チャカ、テラコッタさんを呼んで来てくれ」

「ああ、分かった」

「嘘ですごめんなさい」

「無視してすいませんでした女房だけは勘弁してください」

「……良いでしょう。…では、ビビ様の寝所へ」

「……う、うむ…」

「ビビ様は一体何をおねだりなさったのだろうか……」



「あービビちゃんの寝顔かわいいっ…!天使…!!」

「シッ!国王!騒がない!」

「……ですからお二方、お静かに…」

「……あ、ありました。さんたに宛てたお手紙です」

「でかしたぞペル!」

「貸せ!貸せ!」

「ちょっと国王引っ張らないで!」

「イガラムこそ顔突き出すな髪が邪魔だ!」

「……お静かに」

「はい」

「ごめんなさい」

「……執務室へ戻りましょう、こう暗くては何も見えません」

「ええ、チャカの申す通りです。ビビ様のお手紙はそこで拝読させて頂きましょう」



「何とかビビ様に気取られずに戻って来られましたね」

「……奇跡ですな」

「そうぶつくさ言うな二人とも! さーあビビちゃんのおねだりだぞ! パパ何でも叶えてあげるぞ!!」

「はー親バカのおっさん…」

「何だと! …そういうイガラムこそ自分の財布ごそごそさせて爺さんかね」

「誰が爺ですか私はまだ…!」

「まあお二方、落ち着いて。……して、ビビ様は何を欲されたのでしょうか?」

「……えーと、なになに…"サンタさんへ。アラバスタに元気をあげてください。ビビ" ………え?」


「…………」

「…………」

「…………」

「…抽象的……」

「…理想的なお答えですね…」

「…理想的過ぎてビビ様…ビビ様…幼くも何とご立派な……」

「イガラムさん、夜中に大泣きしないで下さい」



「……どうなさるのですか、国王」

「このように抽象的なお答えでは、如何にしてビビ様のご要望をお叶えに………」

「…………チャカ、ペルよ、」

「…はい」

「……何でしょうか」

「申請されてたクリスマス休暇、やっぱ無し」

『はい?』

「今年のクリスマスはビビちゃん及びアラバスタの元気と笑顔の為に働いて。私も頑張るから……」

「えっ」

「なっ…」

「イガラムも、年明けに回してた執務、今年中に終わらせよう…一緒に、な?」

「へぁっ…?」


「という訳で! アルバーナ宮殿の官吏にクリスマスは来ません!」


「…えーっ………………ああもう!!良いですよ! これもビビ様が為!! なっペル! がんばろう!!」

「……イガラムさん…血涙流すくらいなら賛同なさらないで下さい……はあ…まあ良いですよ。…あいつにも伝えておきます……(食事の予定が潰れたな…)」

「チャカは!」

「……横暴な……しかしこれも王命……はあ…やむを得ませんな………(家内にどう説明しよう…)」



斯くして、アラバスタ王国高官たちのクリスマス休暇は消滅したのであった。



Xmas
(国家元気製造班)





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軍吏長もへんたいも出てこないリア充のりの字もない残念なクリスマスSSSでした。




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