SSS『初恋』
2014/10/30 23:56
(知らないうちに、恋をしていた。)
自覚はずっと無かった。
…なあ、ペル。おまえにはあったのか?
……わたしは、分からなかった。
幼い頃から私たちはずっと一緒だったろう。…だから、余計に。
一つ年上の悪友に、いつも付いて回るような心地でおまえとつるんでいた。
おまえがいない時は寂しかったよ。
チャカの奴は、私らよりずっと年上だったから、練武だの習い事だの、最後には一足先に入隊されてしまったし……
わたしには、おまえしかいなかった。
なあ、覚えているか。
私が両親を亡くして、隠れて泣いていたあの時。
一番に私を見つけて、背中を撫ぜてくれたのもおまえだった。
………なあ、おまえは笑うだろうか。
…あの時な、わたしは、おまえを見て思ったんだ。『まるで、おとぎ話に出てくる騎士さまのようだ』と…
陳腐な御伽草子の、ありきたりな話の、つまらない少女趣味な思考だった。
………なんだよ、ペル。
…………寝たのか。
おまえから話してくれとせがんだ癖に、しょうのない奴め……
良いさ、寝たのなら小っ恥ずかしい事でも言ってやろう。
自覚はずっと無かった。
そう、つい最近まで。
…だが、きっと、あれが私の最初で最後の…
……ふふ、いや…今も続いているな…
あれが、わたしの………つまりその、おまえの聞いてきたそれだ。
………おい。
どうして赤くなっているんだ。
…おまえ…! 狸寝入りだったのか!
恥かかせやがって…!!
このっ………
初恋
(気がつかないうちに、おまえを想っていたんだ)
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「なあ、初恋の男は誰だったんだ」なんて、ペルさんの無粋な問いかけに答えていた律儀な軍吏長。
ペルさんは途中から恥ずかしくなって寝たふり。
初恋の日、おもっくそ遅刻でこんなんです。すみません。