卑怯者の懺悔 | ナノ




鶴丸の質問に、頷くことしかできなかった私に変わって彼が話し始めた。

「君を夜中に驚かせたことがあったろう」
「うん」
「恥ずかしい話なんだが、あの時君に怒られてから臆病になってしまってな」
「怒りすぎたよね、ごめんなさい」
「君はあの時ここに来たばかりだったし、慣れない場所で夜更けに驚かされたらあれが普通だろう」
「……ありがと」
「納得してないって顔だな。兎に角言いたいのがな、俺もあれ以来君に話しかけたりしなくなってしまっただろう?君は男所帯で居心地が悪かったろうに、あれは良くなかったと少し反省しているんだ」
「でもそれは私が勝手に、話も合わないだろうしって避けて、そのせいだから」

だから、なんだと言われれはまそれまでだけれど。お茶を飲んで息をつく。

「これからどうするんだ?」
「……これから、は」

加州のことを思い出した。それから私に向けられた言葉と、何か言いたげな目。

「主の言う通りあれはおれの勘違いだったのかもしれない。でも、もう限界なんだ」

人見知りなのも、話すのが苦手なのも、それでも大事にしてくれてるのも知ってる。でももう、

「…………多分、ほとんどの人が希望するだろうから、他の審神者のところに送ることになると思う。その、みんなのことを」
「君は?」
「私は……誤解があれば解きたい。でも、加州のことで、諦めちゃった方がこれ以上、」

苦しまなくて済む?嫌な思いをしなくて済む?……どちらも違う。それはきっとみんなのほうだから、私がこう言ったらよくない。鶴丸にもまた、誤解されてしまう。

「確かに、これから誤解を解くのは簡単じゃないだろうな」
「……」
「いいんじゃないか。君がしたいように、そう思うなら諦めたって」
「え」
「投げやりな答えかもしれないが、俺も俺なりに考えてな。少なくとも無責任であるべきだと思っているんだ」
「無責任であるべき……?」
「要は、あれこれ口を出すのは違うと考えたわけだ」

どっこいせ、と羽のような体を持ち上げて音もなく背を向けられる。

「だがな、俺が加州に訴える君の声に動かされたことも忘れないでやってくれ」

なんだそれはと呼び止めそうになった。そんなこと言われたら私の中で揺れる天秤はぴくりとも動かなくなってしまう。口を出すべきじゃないと考えたのに、忘れないでくれなんて。分からない。彼の考えていることが。刀として、多彩な時を過ごしてきた彼の言葉には他の意味があるのだろうか?人として降りたばかりの彼のなんとなしの言葉なのか。
正直期待していた。まさか寝て起きたら彼が全て解決してくれていた、なんてことはないとは分かっていた。けれど、どうすればいいのか立ち竦んだままの私を引っ張る重りになる何かを与えてくれるんじゃないかって。それなのに、話したところで結局私は、

「……あ、」

やだ、何言ってるんだろう。
私は元より、自分一人で決めなきゃいけないんだ。


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