卑怯者の懺悔 | ナノ




「おはよう、加州、大和守」

一瞬喉が詰まりそうになったのはバレてない……はずだ。

「おはよ」
「おはよう」

短く返しながらも嬉しげな加州と優しい声音で笑う大和守。ぶつかり合うことは多いけれどやっぱり仲がいいのか、大和守が来てから加州には何かこう、覇気のような何かが強くなったというか、いつもに増して元気な気がした。みんなもそれを喜ばしく思ってる以上言えるわけがなかった、大和守が怖いだなんて。
正しく言うと怖いじゃない、私が勝手にびびってるだけだ。けれどどうしても考えてしまう。前の主がとても大事で、私みたいな不甲斐ない審神者に仕えるのなんてご免だと思ってるとか、逆に新しい主の元で頑張ろうと思ったのにこんな奴で嫌だ、他の審神者のところに行けばよかったとか。言われたこともなければ、その素振りすらない不満を持っているのではと。こんなの考え出したら全員に当てはまる内容だろうに、なんで大和守に限ってこうも疑ってしまうのか自分でもよく分からない。

「おはようさん。今日は早いな」
「おはよ、薬研。なんか目が覚めちゃって」
「毎日こうなら問題ないんだがな」
「頑張ります……」

からかうような声音にちょっと苦笑して見せてから食卓を眺める。最初に比べて随分と人数が増えたものだ。

「おっ、もう起きてるのか。こりゃ驚きだ」

ひょこりと顔を覗かせたのは鶴丸だ。いつも朝は目が醒めるだろって驚かせてくるのに普通の登場だった。まあ毎朝されているわけではないのだけれど、もしかして昨日の適当な返しのせいかな、なんて自分のせいの癖にちょっと心配になる。

「、」

あ、と間の抜けた声がもれそうになって開いた口をそのまま閉じる。なんで大和守に限って。それは彼だけが、まだ始めたばかりだからと不慣れな私を支え、失敗しても次頑張ればいいと背中をさすってくれるみんなとは違う。審神者の立場としての私に気を使うことも気後れすることも甘やかすこともなく、そぐわない人物だと認識したら真っ直ぐ不満をぶつけてくると、そう思ったからだ。



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