卑怯者の懺悔 | ナノ




私は刀剣たちに嫌われているのではないかと思うことがある。いや、嫌われているはずは……ない。だってみんな雑談したり、私に会いに来てくれたりする。一緒に話そうと誘ってくれるし、夕飯の献立のリクエストを聞いてくれるし、私が触れると嬉しそうな顔をしている。ただ、ごくたまに避けるように逃げられるというか、批難めいた目を向けられる気がするのだ。
私の卑屈は根っからのものだ。予定もなく暇してれば他のよく行動を共にする子は他にも友達がいて楽しくやってるんだろうなとか、バイト先であまり話さない人はもしかしたら私のことよく思ってないのかなとか。
だからこれもそういう思い過ごしの可能性があることだと考えたいの、だが。最近気付いたのだが、小夜はみんなほど私と距離を詰めてくれない。頭を撫でさせてくれるし、隣に招いておやつを食べたりするけれど、他の何もない時に私の側を選択したことがない。加州や山姥切のいつものスイッチが入った時に無視して無理矢理背中を押すと周りから訝しげな目が向く気がする……これは私が悪いのかもしれないな。あと初めて今剣と遊んだ時にすぐ疲れてしまってつまらないって言われたのも実は気になっちゃったんだよな。いやしかし、体力がない運動不足な私にはキツくてほんと。
ぼんやり歩いているとどこかから賑やかな声が聞こえた。今剣と鳴狐が来てまず行ったのはレベリング。そんなわけで何度も出陣した結果、五虎退と秋田がやって来たのだ。たまにちびっ子達と一緒に薬研や鶴丸が鬼ごっこをしていることも今となっては珍しくない。加州や山姥切も怪我をしないように目を向けたり相手をしたりしてくれている。
そういえば秋田は薬研の兄弟分って言ってた。みんなにも兄弟分や知り合いもいるはずだ。これから揃っていくんだろう。そうすればここももっと賑やかになって、戦力も増すし、それに…………そしたら、

「安定!」
「あれ、清光だ」

私は、ひとり蚊帳の外だ。
出陣組が連れ帰ってきた新しい子と留守番をしていた加州が顔を合わせてすぐに目を見開いたものだから訳を聞くと、二人とも同じ主を持った刀剣らしい。そういえば土方歳三の刀もあるらしいけどその子達とも知り合いなんだろうか。

「せっかくだし加州案内してよ」
「えー、めんどくさ」

嫌そうな顔をしながらも渋ることなく立ち上がって加州が部屋を出て行く。穏やかな顔でよろしくね、とは言ってくれた。けれどなんていうんだろう、新しくできた友達が昔の友達と仲良くしているのを見た時みたいな複雑な気持ち。この本丸を巡りながら思い出話にふけるのだろうか。大和守が穏やかな笑顔を向けてくれたのが唯一の救いである。
そういえば今剣の相手をしてすぐに疲れてしまった時もそうだけど、凄い使い手の剣は私なんかの下でって凄く嫌じゃないのかな。こんなたいしたことない奴に使われるのなんてごめんだ、みたいな。

(部屋で少し寝よう)

それがいい、寝てる間はなんにも考えないですむから。そう考えて部屋を出ると縁側で思案顔の鶴丸がこちらを向いた。大方新しい驚かせ方を考えていたんだろう。

「ああ君か」
「今日はお疲れ。誉掻っ攫われたって薬研が言ってたよ」
「はっはっは、驚いたか?」
「まあ、うん。私ちょっと寝るから。それじゃあ」

相変わらず元気な彼に応じる気力もなく、早々に会話を切り上げた。ちょっと返事が適当すぎたかなとも思ったけれど、もう何も考えたくない。





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