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蒸し蒸しとした体育館。もちろん普段の練習の時もハードな内容につられるかのように気温は上がるのだけれど、この湿気混じりのじとりとした暑さはどことなく季節を感じさせた。今日の合宿は学校が終わり次第の集合だったため、練習も試合もさほどないままひと段落となった。
音駒の戦歴はまずまずだが明日は更に追い上げるのではないのだろうか。私もマネージャーの皆と仲良くなれたし粗方仕事も教わった。こっちが質問するまでもなく必要な情報をくれる辺り手慣れているというか、優秀だ。

「おーい、なまえー!俺のスパイク見たかー!?」
「あ、ごめん、マネージャーのお仕事教わってたから……明日見るよ」
「なんだよー、つまんねぇなー。さっきのなんて結構インナーだったんだぜ!なっ、赤葦」
「ああ、あれはいい感じでした」

さっきから気になっていた木兎君の隣にいる子に目を移した。なにせ皆身長が高いから分からないけれど、敬語ということは後輩なのだろう。

「2年の赤葦京治です。いきなり木兎さんがすみません」
「3年のみょうじなまえです。ご丁寧にどうも」
「お前ら見合いでもするつもりか」
「黒尾君ってたまにジジくさいつっこみするね」
「おい」
「あー!!!んじゃ赤葦ちょっとボールあげてくれよ!すんげースパイク打ってやるから」
「でも夜ご飯の時間じゃ」
「別に片付けるまでに食えば大丈夫だろ。いーじゃんそれ」
「はぁ……今日のうちにやることあるんですから、一本だけですよ」

ぞろぞろと皆が体育館を出て行く中逆方向へと歩く。正直仕事教えてもらうことばっかり考えてたし、音駒見るので精一杯だったし体育館は煩いしでほとんど見れなかったからありがたい。

「よしこいッ!」

試合のようにな熱気も、声もなく、赤葦君が静かに持ち上げたボールを目で追う。木兎君の振り下ろされたてがボールに触れた瞬間轟いた音にふと、目を閉じた。



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