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とにかく忙しかった。練習がハードだからマネージャーの仕事も多かったし、そうなると疲れてご飯食べてすぐにお風呂入って寝る。特にこういう生活に慣れていなかった私は体力を削られまくり。当初の余裕はどこへやら、正直何もないまま最終日だ。

「今日で終わりか……」

不思議なことに過ぎてみると早いものだ、と思いながら小さく呟く。

「あ、なまえ」
「孤爪君、どうしたの?」
「ドリンク……貰いに」
「あ、じゃあどうぞ」

ちょうど運んでいたそこから取って、と手を差し出すと細い腕が一本掴んで口へと運んだ。

「……あのさ」
「うん」
「なんで……入ろうって思ったの」
「バレー部?」
「、うん」

驚いた。そこまで仲が良いというわけでもない私にそんなこと聞くなんて。なんだかんだで無頓着な彼もバレーに関しては思うところがあるのだろうか。

「私って予定が沢山あった方が頑張れるからバイトしてたんだけどね、いいタイミングで黒尾君にマネージャー誘われて」
「知ってる」
「え……ああ、そっか」

幼馴染だもんね、と視線を横にいる彼に向けることなく笑う。

「なんで、オーケーしたの」
「そりゃあぴったりの物件だったし、初心者でも構わないって言ってくれたし、やり甲斐もあったし」
「……」
「バレー大好き、みたいな凄いちゃんとした理由はないんだけどね」
「別に……俺もだし」
「孤爪君も?」
「クロに、頼まれたからやってるだけ」
「そうだったんだ。黒尾君は頼み上手なのかな」
「断れない人を見つけるのが上手いんじゃない」

冗談半分で言った言葉に冗談が返ってきてはっと孤爪君の方を見た。僅かに頬を赤くした顔が私の視線に気付いて慌てて顔をそっぽへ向ける。しかしちゃんと聞いたぞ、この耳で。

「孤爪君」
「なに」
「あと2試合、頑張ろうね」
「うん」

孤爪君に抑えてもらっている間にドアの横を抜け、小走りでドリンクを持っていく。一番に取りにやって来た黒尾君がなんとなく分かった風な顔でこちらを見た。

「嬉しそうだな、研磨と何かあったか?」
「ちょっと仲良くなれたかなって」
「そりゃ良かった」


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