適切かつ妥当 | ナノ



「彼氏?いたことないけど……」
「え、嘘でしょ!?」
「告白とかされたりって、」
「あー……まぁ無くはないけど、別に友達だからって」

ざわつく女子部屋の恋話は、私の一言から始まった。

「なまえちゃんお待たせー!遅くなってごめんね!」
「ううん、大丈夫。たまたま赤葦君と会ってお喋りしてたから」
「赤葦と?」
「先輩達が騒いでたから先出てきたって」
「あー、木兎だね」
「木兎煩いからね」
「でも一緒にいると楽しいよね」
「え!?もしかして木兎みたいなのタイプなの!?」
「いや、それは違うけど……」
「だよねぇー。あ、でもあれで木兎モテない訳じゃないんだよ」
「てか赤葦はどうよ。凄い仲良くなってない?」

確かに赤葦君とは合宿1日目にしては割とよく話したように思う。けれどそれは木兎君とか宿題の存在ありきであって他意はない。彼女達もその点について分かってはいるのだろうけれど、あえて話は含みを持たせたまま進んでいく。
バレー部で誰がイケメンとか、性格がいいとか、そのうちこんな武勇伝があるとか。そうして話が逸れ出した頃に突然に振られたのが彼氏の話題だった。驚いたことに学生時代の告白イベントは生前、まぁつまり、前世の私の時より盛んだった。多分今の私が昔の私より男受けする顔寄りだったんだと思う。他に違う点が無いのだからそうとしか言いようがない。けれど、いかんせん誰かを好きになることも無かったし、何より思い出してほしい。私は所謂前世の記憶持ちキャラだということを。もしかしたら他人の体を占有しているのではというごく僅かな可能性を考えると更に歯止めがかかって、誰かとそういう関係性に踏み込む事を戸惑っていた。これ、割と真面目に悩んでる。
ピンクな話題できゃっきゃと盛り上がる一室では、ターゲットは今度は彼氏持ちの子へと移り、みんなの恋愛変遷になり、そして好みのタイプへと変わった。すでに敷いてある布団に寝そべっているせいか眠気が襲ってきて話の内容が頭に入ってこない。眠そうだね、とか眠い?と問われたのを最後に合宿1日目の記憶はそこで終わった。



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