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マネージャーの皆とのお風呂は楽しかったのだけれども、入浴時間の短さとのぼせやすさだけはどうにも出来なくて先に脱衣所から外へ出る。狙ったように置いてある紙パックの自販機の前で佇んで、いちごミルクかコーヒー牛乳かで悩み込む。

「買わないんですか?」
「!赤葦君……おかえりー」
「おかえり……?」
「?……ああ、ごめん。お風呂上がりの人におかえりーっていうの癖で」
「ああ、成る程」
「実はいちごミルクとコーヒー牛乳どっちにするか悩んでて」

またぼんやりと自販機を見た後、ああそっかと横にずれる。

「あ、赤葦君買うなら先どうぞ」
「ありがとうございます」

やっぱりコーヒー牛乳にしよう、と小銭を投入する赤葦君の横で財布を出すと決まったんですか?と小さく笑って問われた。

「うん、コーヒー牛乳にする。いちごミルクは明日かな」
「そうですか」
「そういえば赤葦君、皆と一緒にお風呂入らなかったの?」
「一緒に入ったんですけど、木兎さんが騒いで他の皆さんはのんびりしていたので」
「先に出てきた?」
「はい。あ、これどうぞ」

ばたん、という音と共に取り出し口が閉まりコーヒー牛乳のパックが目の前に差し出された。

「さっき、教えてもらったお礼です」
「ありがとう……じゃあそれ貰うから、私が赤葦君の分買うよ。どれがいい?」
「いえ、お礼ですから貰ってください」
「それじゃあ遠慮なく。ありがとう」
「どういたしまして」

ストローをさしてコーヒー牛乳をのんびり飲んでいるうちに彼は自分の分も買って、二人して大浴場前のスペースで並んでストローを吸う。なかなかシュールな光景だ。じゅっと音がして殆ど空になると、口を話して横にいる赤葦君を見上げる。

「さっき教えたのだけでこれ貰うのもちょっとぼったくりすぎるし、また何かあったら言ってね。ジュース代ってことで」

自動販売機の横に設置されていたゴミ箱に紙パックを中途半端に潰して捨てると、今度はおとなしく了承の返事がきた。

「まぁ合宿では私のがお世話になるだろうけど。それじゃあ、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい。明日からよろしくお願いします」



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