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今日が一番疲れが残っていないから。そういう理由で宿題をやるらしい。少しだけ遅れて夕食を取っていると近くに座っていた夜久君が教えてくれた。そのまま一緒にやろーぜなんて黒尾君が二人に絡んで私もそこに巻き込まれる。マネちゃんズとお喋りもしたかったんだけどそれは部屋でも出来るから良しとしよう。ちなみに赤葦君と同じように絡まれた研磨君は容赦なくガン無視して一人部屋に戻ってしまった。

「そういやそっちの宿題はどうなの」
「すっげー出た」
「マジで」

さっきニコニコとボールに触れていたのが嘘のようにへこむ木兎君がつらつら宿題の詳細を話していく。私達よりほんの少し多めぐらいだった。

「赤葦君はどうだったの?」
「木兎さんとそんなに量は変わりません」
「へぇー」
「みょうじー、英語の宿題見せて」
「別にいいけど」
「え、まじ!?」
「全部間違ってても文句言わないでね」
「全部はねーだろ。っておい待て」

確か英語の宿題なら終わらせたはずとノートを出して差し出すとぎょっとした目でこちらを見られた。

「いつ宿題やったんだよ」
「学校で空き時間に」
「お前……頭よかったの」
「失礼な。英語は小さい頃やってたからね……理系がご臨終してるからって舐めないでいただきたい」

自分はまた別の課題を出して解き進める。英語終わってたら殆ど終わったようなもんじゃねーか、と呟く黒尾君の声はスルー。他のみんなも英語をやっているようで、黒尾君はウェブサイトの英和辞典、赤葦君は電子辞書、木兎君は何も出さずに時々二人のどちらかに聞いたり借りたりして進めていく。
向こう側に座っている勢に呼ばれたり逆があったりして話し声はもちろん人の気配もちょいちょい移動する中、特に誰と話すでもなくシャープペンシルを動かす。あ、いい調子かも、なんて思ってひと段落ついたところで一度それを置くと、周りを見回してみた。
軽く談笑している人がいるものの基本的にみんなが机に向かっている(若干名は寝ているが)。あまり静かな環境での勉強は好きではなくて、少しつまらなさを感じた。置きっぱなしの携帯をちらりと見てみるけれど連絡は特になし。

(なんか暇だなぁ)

ぼーっとそのまま携帯のホーム画面を見つめていると、ふと斜め前からみょうじさん、と控えめに声がかけられた。

「すみません、どうしても文法が理解出来ない場所があって」
「ん。どこ?」

少し遠いからと赤葦君の席の方へとテーブルをくるりと一周。黒尾君は未だに複写作業に勤しんでいた。

「ここの文なんですけど、」

途中までは読み解けたけれどその後が、と赤葦君の言う文を覗き込むと髪が落ちてきてこんど切ろうかなと考える。

「あーここはね」

文章に目を通してから構造だけ説明するとそれで理解したのかありがとうございますと丁寧にお礼が返ってきて、赤葦君の横でノートを見るために倒していた上半身を起こした。
それが気分転換になったのか、また調子よく残りの問題を解くと皆より早く終わってしまって黒尾君に暇なら研磨の様子見てきてくれと頼まれる。まぁその当の本人は風呂まで済ませて部屋で寛いでいたわけだが。それを伝えるといつの間にか女子に囲まれて大浴場へ向かうことになったのだった。



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