適切かつ妥当 | ナノ




「なまえって尽くすタイプ?」

昼ご飯を食べながらそう言われて首を傾げる。いきなりなんだろう。尽くすかっていうと、まあ人の役に立つのとか好きだからそうかもしれないけど尽くしてもらうのも好きだ。人間そんなもんじゃないだろうか。

「いや、音駒で働いてるなまえ見てると尽くしてるなーって」
「いやでも、マネージャーの仕事だし、お互い様だと」
「そうなんだけどさ、一番ばててる人の所に最初に駆けてったりとか、捜し物してる時もパッて持ってったりとか」
「あ、私も思った!昨日の夜もパパって片付けてくれたりとかちょっと遠くにあるもの何も言ってないのに取ってくれたりとか」
「たまたま目に入っただけなんだけどねぇ……」

ぱくりと最後の一口を飲み込んでお皿を片付ける。

「何々、うちのマネージャーがどうした?」
「あんたんとこのマネージャーめちゃくちゃ気がきくって話してたの」

会話に入ってきたのはたった今昼食を食べに来た黒尾君。木兎君(とそのお守役の赤葦君)が一緒な辺り仲がいいんだなぁと実感した。

「おつかれー」

席に着くとあっという間にコップの中身を飲み干した彼らにおかわりを注ぐと、ああ、と納得したようにクロが呟いた。

「確かに元々の性格ってのもあんだろーけど。まぁとにかくマネージャー向きだってマジで」
「褒めても何も出ませんよ」
「でも俺も確かに、よく見ているなと思います」
「えっと、ありがとう赤葦君」
「俺にはお礼ないの?マネージャー、っておい何俺の肉取ってんだよ!」

ぎゃーぎゃーと騒ぎ始めた木兎君と黒尾君にみんながけたけたと笑っているうちに手を動かしながら今日はよく褒められるなぁと少し顔が綻んだ。小さなことも見てくれてるってなんだか凄く嬉しい。

「それで、結局なんですか?」
「なにが?」
「黒尾さん、他に理由があるみたいな言い回しでしたけど」

疑問を浮かべた赤葦君に木兎君から肉を奪い返した黒尾君が何てことない風に口を開いた。

「職業病だな」
「ですよねー」
「みょうじさん、バイトしてたんですか?」
「うん。2年の終わり頃まで転々と。その時期に黒尾君にナンパされたんだよね」
「ナンパじゃねーし」
「ねーねーオネーサン、バレー部のマネやんない?って」
「聞けよ」
「聞いてるよ。返事してないだけ」
「黒尾どんまい!」
「うっせ!」

また騒ぎ始めた2人を他所に、ずっとマネージャーをやっていて経験がないからかバイトについて質問責めにされる。年上(中の人的に)なのに色々教わってた反動かちょっもいい気分になった。

「でもみんなもマネージャーやってたしすぐ仕事慣れると思うよ?」
「まじか!」
「うん。可愛い制服のとこ行きなよ、遊びに行くから」
「あ、そっか。制服もあるんだもんねー」
「なまえちゃんのとこはどんな制服だったのー?」
「うーん、制服じゃなくて私服にエプロンって感じのとことか、居酒屋のとか、和服とか……あ」
「?」
「カフェで制服だったんだけど、あれの男性社員のやつよかったんだよね……赤葦君似合いそう」

ちらりと3人の方を見て考える。……黒尾君は、ちょっとバーの店員みたいになりそうだけど。木兎君は駄目だ。似合う似合わないじゃなくて静かなお店には合わないだろう。
そういえばここの制服可愛いよねなんて話で盛り上がって、3人が昼食を食べ終えると同時に立ち上がると片付けを終えた赤葦君がふと隣に来た。

「さっき俺の名前聞こえたんですけど」
「あ、気になった?」
「まぁ……」
「意外と気になるタイプなんだねぇ。大丈夫、いい内容ですから」
「そう、ですか」
「うん!私が前にバイトしてたとこの制服、赤葦君着たらかっこいいだろうなぁって」
「……ありがとうございます」
「いーえ。ふふ、赤葦君ってモテるでしょ」

少し照れたような表情をした赤葦君に口が柔らかく綻んだ。無表情で落ち着いた雰囲気だったけれど意外と表情に出るみたいで、寧ろそれが好印象だ。

「そんな事はないですけど」
「そう?まぁ自分モテますって言う人もそういないけど……」
「そういうみょうじさんはどうなんですか?」
「一度モテてみたいですね!彼氏もいまだにいませんよー」
「そうですか。まぁ合宿に来てる連中は基本そんなもんですけど」
「やっぱ部活忙しいとね……まぁでも楽しいならいいんじゃない?やりたいことやるのが一番だよ」
「はい。今日もよろしくお願いします」
「こちらこそ。私はあんまよろしくし過ぎないよう頑張ります」
「別にいいですよ。何かあったら言ってください」
「うん」



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