夢見 | ナノ




よく見なければ分からないほど綺麗に切り取られたページはちょうど自分たちが別れてからのものだった。あの日、自分の見てきた彼女と違和感を感じていたが、この不可解な行動が、それとは逆に俺のことを記述してある事に関して何も言わず渡してきたことが確信を持つに至った。神妙な顔つきのクロと、俺とはぐれてからの記述に目を通す。はぐれて二度目の夜についての記述だった。


孤爪君とはぐれた後、連れてこられた部屋は何もなかった。灰色のコンクリートに四方を囲まれ、蛍光灯が光ってる。スイッチはない。他に何が置いてあるわけでもない。扉はロッカーのような軽く触っただけで音の響く素材だ。内開き、鍵穴はないけど開かない。あの子は逃げたら孤爪君を殺すと言ってきた。鵜呑みには出来ないけれど、今の私が置かれてる状況を考えると真剣に捉えた方がいい気がする。
せめて学校の何処かなら助けを求められたのに、此処はどこなのかさっぱり分からない。何かの準備室や教材室の類だろうか。広さ的にはありえるけれど、荷物はおろか、痕跡もない。綺麗な壁に綺麗な床だ。唯一の救いなのが他に幽霊みたいなものがいないことだと思う。こんな所にあの子と二人きりになってたらと思うと。
孤爪君は大丈夫だろうか。あの子は私をここに閉じ込めてから消えてしまった。もしかしたら孤爪君に手を出したのかもしれない。返信が来るのを祈るばかりだ。私はこれから、どうしよう。

昨日から進展はない。最悪だ。孤爪君にも自分でなんとかしてみると言ったはいいものの、どうしようもない。言ったところで何か変わるか怪しいけれど。色々考えすぎたのか、少しだるい。結局何も分かってない。


急に短くなった文面。ふと思いついてその次の何も書いてないページに目を凝らした。切り取られていたのはこの次の日以降の分で、これ以上何かが書かれたページはない。筆圧で少しでも書いた字が残っているかもしれない。
鉛筆で塗りつぶして文字が浮き出るほどではないものの、若干の跡が見えた。所々読み取れる断片的な単語。具合、酷く、お母さん、長い……あとはよく使う漢字一文字しか読めなかったり、ひらがな一文字だけ。特に意味はないだろうに細めていた目を戻すと、このページを開いて最初に目についた最後の一文に再度、目を通した。

私の体が取られる


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