夢見 | ナノ




「……」

あまり体調が芳しくない。それがあまり外に出ないタイプの私が今回は目に見えて青白い顔をしているからか、すぐに親は頷いてくれた。幸い病院には連れて行かれてないし、ある程度は動けるからと付きっきりの看病をされてもいない。この点に関しては安心している。だって原因は風邪でもなんでもなくて、あの夢の中の世界に関係しているから。
携帯を開いて弧爪君との連絡の履歴を見た。彼とはぐれてしまってからほんの2日。それなのに物凄く長い間会ってないような気分だ。あの時同じく連絡先を交換した黒尾君から何もない辺り、今頃、どんどん探索が続いているんだろうな。
私はあれからただ部屋に閉じ込められたままだった。窓もない、物もない、ドアが一つついているだけの部屋。灰色のコンクリートにただ囲まれて、寧ろここは安全なのかもしれないと思い始めてすぐのこと、私を誘拐したあの子の声がした。

”逃げたらあの子も殺しちゃうよ”

私にできるのは時間稼ぎだけだった。あのまま私のことを忘れてくれたらいいのに。弧爪君ならもしかしたら、そうしてくれるかも。たくさん助けてもらったくせにそんな失礼な事を考えて目を閉じた。今日もまた、ここから出られない。


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