夢見 | ナノ


「へ」

かろうじて掠れた声が出た。
真っ暗な見覚えのない校舎。ここは何処かとか、なんで入れたのかとか、どうやって来たのかとか、分からないことだらけ。
体を起こした机のサイズから見るに、中学か高校なのは分かった。夜の学校というただでさえ不穏な場所に一人、しかもこんな訳の分からない状況とくれば恐怖を感じる他ない。

「っ……」

どうしよう、ずっとここに居るわけにもいかないし。ポケットを探っても携帯は出てこない。窓から眺めた校舎はどこも電気がついているわけなくて、恐る恐る、教室の扉に手をかけた。
引き戸特有のガラガラという音がやけに響くものだから、ゆっくり少しずつ開けて、そっと廊下を覗いて見る。思ったより、暗い。怖いよ、進みたくない。
大体なんでこんな場所に。私部屋で寝てたはずなのに。夢なら早く覚めてほしい。お願いだから早く。

「誰?」
「っ!」

急に聞こえた声にあがりそうになった悲鳴を咄嗟にのみ込む。声のした方を恐る恐る見た。何も見えないけど、でも他にも人がいる。声も少し高めだったから同じぐらいの年の子かもしれない。この学校の子かな、そうしたら場所を聞いて帰ろう。夢遊病、みたいな何かだったのかもしれないし。

「あの」

ここの生徒さんですか?
そう口を開こうとした時、窓の外で何かが落ちた。




「っ!!」

カーテンの隙間から柔い光が射し込んでいた。

「ゆめ……」

咄嗟によぎった影の方へ顔を向けた瞬間、落下していく女の子と目が合った。ただでさえ怖い夢は体力を使うのに、今だにリアルに記憶に残った光景のせいで朝から気分は最悪。時計は寝るにも起きるにも中途半端な時間を指していて、深くため息をついた。

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