収穫はなし。そう伝えても弧爪君は特にショックを受けた様子もなく頷いた。ホッとしたような最初から期待されてなかったような微妙な感覚。
「事務室はこんなものかな……」
「うん。いざとなればここに逃げ込めるから放送室調べよう」
「……分かった」
やっぱりか。なんとなく予想はしていたけど、なにが居るか分からないからあんまり行きたくはない。けれどなんの情報もない状況でそんな我儘を言ってる暇もなく、もう一度放送室のドアの前に立った。
「いくよ」
今度は最後までドアノブが回った。勢いよくあ開けて身構えるけれど、衝撃も何もない。
「……?」
静まり返った放送室。事務室を漁っているうちに出て行ったか、そもそも中には何もいなかったか、それとも……まだ中にいるか。
「孤爪君、」
「……」
部屋を軽く見回すけれど特に変わった点はない。お互いに何も言わぬままほぼ立ち尽くしていると、またぶつりと放送の入る音がした。ハッとしてマイクに目を向けたものの誰もおらず、音響のスイッチ一つ入っていない。
”ふふ”
女の子の声だった。
”ふふ、ふふふふふ……”
「孤爪君、外に」
「うん」
少し後ずさってからドアに駆け寄った。勢いよくドアノブを捻り押し開ける。瞬間、視界に見知らぬ制服を身に纏った少女が視界いっぱいに広がった。
「しまっ」
”ばーか”
スピーカーと耳元から同じ鈴のような声が耳に響いた。右手首を見た目からは考えられない力で握られる感触。
”私、弱虫ってだいっきらいなの”
「なまえ!」
振り向きざま、恐怖で引きつった意識に名前を呼ぶ声が轟いた。あれ、孤爪君ってそんな声を出すんだ。そんな顔もするんだ。私も何か言おうとしたのにすぐに視界が薄暗くなっていく。目が覚めるのかな。それとも、
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