夢見 | ナノ




あれから1週間近く経とうとしている。夢の中という特殊な環境だったからだろうか、何もない部屋に1人でいた精神的な影響もあっという間に戻って、いつも通りの日常を過ごせている。良い意味でも、悪い意味でも。
安全だというその部屋に閉じこもってから今日まで、収穫という収穫は何もなかった。それもそうだろう、これまで得た情報と今いる部屋から読み取れる情報を調べたって限りがある。

やっぱりこのままじゃいけない。
分かっていても少し躊躇してしまう。私の体を盗んだ子がまだいるかもしれない。正直よく判別はついてないけど、最初の飛び降りた子とまた別人だったらその子の事も考えないと。
そんな恐怖心をもう既に察しているんだろう彼も、外に出る事を催促してはこない。少し打ち解けたつもりでいたけれどやっぱり言い出しづらいのだろう。黒尾君が言ってた話やこれまでの様子を見ると何となく分かる。元々自分の意見を言うタイプでもないし、それにこれは予測でしかないけれど、外に出る事を提案したことで今の"落ち着いた状態"の私が損なわれるのを心配している……かもしれない。
以前、ふとした沈黙や視線に違和感を感じていたのも、ここ数日ではもの言いたげな沈黙や視線となって私に向けられている。

ずるいやり方だと批判したくなった。私が言いだすのを促そうとするなんて、と。けれど確かにそうしなきゃ駄目なんだ。だって彼は外に出るつもりでいる。それにストップをかけているのは私。なら私が出たいと、出ようと言わなきゃ何も変わらないのだから。

だから、口を開いた。
彼は黙って頷いた。

明日からにしようと、与えられた猶予はきっと彼の優しさだ。


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