夢見 | ナノ



「クロ」
「ん?どうした」
「なまえが……夢、見なくなったって」
「、それ本当なのか」
「朝きてた」

そういって向けた液晶画面には、細細と行われたやり取りの履歴と、夢見なかったと、簡単に告げられた文字が照らされていた。正直、一番危なかったのは彼女の筈だ。単体で狙われた挙句接触して見知らぬ場所へ飛ばされた。なのになんで。
本人も訳がわからないらしくて、取り敢えず今日も様子を見てまた連絡すると返信が来たのでクロにもそう伝えた。きな臭いことになってきたな、という呟きは聞き流して翌日。やっぱり何もなかったという彼女に会う約束を取り付けた。
こないだと同じ、駅前のファーストフード店の同じ席。先に注文したポテトをつまみながらなまえを待つ。正直、本人が訳が分からないと言っているのに会ったところで何かが変わるかと言うと微妙なところ。

(まぁクロもしきりに会えって言うし、早く済ませたいな…)

ちらりと入り口の方を見やるとまるで図ったかのようなタイミングでなまえがやって来た。ハンバーガーと飲み物だけ注文すると、立ち止まっ視線をうろつかせる。俺と視線が噛み合った瞬間に小走りでやって来る。

「お、お待たせ!」
「おー。お疲れさん」
「ありがとう。えっと、」

隣に座って言葉を探す彼女に耳を向けながら手元のスマートフォンのゲームアプリを起動させる。特に彼女も気にしてないはずといつものように辺りを観察して、目が止まる。

「どーした研磨」

目敏く聞いてくるクロの声になまえの視線までこっちに向いて少し眉間に皺が寄った。

「別に……」
「別にって一番気になるだろ」
「……ピクルス、前抜いてたのにって」
「?あ、私のか……言い忘れちゃったし、食べれなくはないから」
「ふーん」
「んで、ちょっと聞きたいんだけどさ。最後に目が覚める直前ってどんな感じだった?」
「それが家の中を歩いてただけなんだよね。変なものも見てないし、何かに触ってたとかもないし」

まあ予想通りの答えではある。彼女のことだから何かしらあれば既に話してくれてただろうし。煮え切らない顔のクロに目を向けると渋々といった風にそっかと頷いた。

「まぁ無事に脱出できたのはいい事だしな」
「、ありがとう。力になれなくてごめんね」
「気にすんなって。……あ、んじゃ代わりっつーのもなんだけどさ、あのノート借りれない?」
「ノート?……あ、」
「学校について調べたってやつ。もしかして今日は持ってない?」
「ご、ごめん……明日っじゃなくて、予定の合う日、音駒まで持ってくよ!」
「助かるわ。明日も終わんの今日ぐらい?」
「うん」
「なら校門まで取りに行くわ」

お互い長時間いる気はなかったのか少ししか注文してなかったのもあって、それが決まるとすぐに店を出た。用もないのに買う物があると反対の方角を指差したことをクロに冗談交じりに咎められたのは、別れてすぐ。その流れで次の日のノートもクロに受け取ってもらった俺は、帰り道にそれを歩き読みして思った。

「ねぇクロ」
「昨日会ったなまえ、偽物かも」
「……は?」


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