夢見 | ナノ



何時ものように探索の成果をクロに話し終えたところで訝しげに質問を投げかけられた。

「みょうじの奴はまだ会えねぇのか?」
「今朝連絡が来てた」
「で?」
「なんとか出られたけど、学校じゃなくて知らない家に出たって」
「……それ、一度顔くらい合わせといた方がいーんじゃねぇの」
「いいよ別に」

お互いバラバラに動けるのはありがたい。確かに足手まといにはあまりならないし察しのいい子だった。不幸中の幸いなんだと思う。怖がっていたけど一歩も動けないギリギリ手前で踏みとどまってたし、咄嗟の判断も出来るし、サポート役に適した感じ。でも今のところ探索に人数の必要性を感じてはいないし、一人の方が楽だ。いくら唯一同じ境遇とはいえど会ったばかりの他人だし。
どうしても助けが必要になったら向こうから連絡が来るはず。少なくとも何事もなく夢を終えれば日常生活に支障はないんだから。ポケットに手を突っ込むと手がじんわり暖かくなった。


「……なんで」

何もない部屋にただ閉じ込められているからだと、思っていた。けれど明らかにおかしい。まだ一度も目覚めていないなんて。また体調を崩して眠りっぱなしでいる?そもそも私は生きてる?何も分からない。疲れはない。眠気も、食欲も。まるで幽霊みたいだと考えてすぐにその不吉な考えを頭から消し去った。
まずこの事態について、時間が長く感じるだけでいつも通り、それはありえない。では向こうの私はどうしているか。眠りについている、死んでいる、あとは……誰かが私になりすましているとか。2番目の考えは消そう、死んでいるんじゃ脱出だのなんだの考える意味すらない。じゃあ最初のか最後の。最初のなら孤爪君が異変に気付いてくれるかも。最後のだったら……それはそれで最悪だ。普通まさか中身が入れ替わったとは考えないし、孤爪君は凄く賢いけど会ったばかりの私が入れ替わったところで気付けるかどうか。
ううん、あの子は私が逃げたら殺すって言ってたのに何助けて貰う気でいるんだ。自分でやらなきゃ。気付かれないように逃げて孤爪君にも危険を伝えて、助かる方法は分からないけど。

「なんとかして出ないと……」

360°すべて灰色のコンクリート。頭上にやや薄暗い蛍光灯2本が点灯。唯一ついているドアはロッカーの扉みたいな素材。内開きで鍵穴はないのにびくともしない。体当たりし続けるしかないのかな……あまり力の強くない私でもそうすればいつかは開くかもしれない。ただそんな乱暴な方法をしてもバレないのか。

(もうやだ、最悪……)


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