夢見 | ナノ




目が覚めて最初に、孤爪君が握ってくれた手に触れた。怖かった。一人じゃなくて本当に良かった。とうとう我慢出来ずぽろぽろと流れ出した涙を拭って、最後に見た名前をメモする。私がやれる事はこれしかないのだから。
何時ものように支度をして学校へ向かう。今日は途中でたまたま友達と会ったからいつもより賑やかな登校になった。クラスが違うから廊下で手を振って別れて、席について携帯を取り出した所で通知が来ていることに気づいた。
この間会った時に教えあった孤爪君からのものだった。大丈夫?の一言だけだったけれど嬉しくて、大丈夫だよ、昨日はありがとう。と送るとあの時と同じように別にと返事がやってきた。初めて会った日に比べると凄い進歩だと思う。

「由美ー、昼休み用事あるから皆で食べててー」
「何か仕出かした?」
「違うってば、もう」
「じょーだんだって」

小さな休み時間に少しずつお昼ご飯を食べてパソコン室へ向かう。たった一人の名前から素人がどこまで辿れるか。そう考えながらマウスを動かしていると、研磨君からまたメッセージが届く。彼が見つけた生徒の名前と日付だった。簡単に探してはみたけれど同姓同名が引っかかって詳しいことが分からなかったとの事。
私もそうだった。学校は記録があるし廃墟マニアだっていたから何とかなったけれど、個人の特定なんて簡単に出来るはずがない。気を落としつつパソコンに向かって数十分、すぐに昼休みが終わった。収穫はゼロ。放課後に頑張るしかないと教室へ戻った。
もどかしい、もどかしいもどかしい。早く学校が終われと時計に目配せをしては視線をあちこちへ向ける。夜になる前に、眠る前に調べなきゃいけないのに。他に何も出来ないんだから、早く。


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