君指 | ナノ



集合の声をかけると、元々なんとなく同じ色に分かれていたジャージの人達がぎゅっと学校毎にこちらに近付いてくる。
それから違う学校の場所に女の子が1人ずつ。

「紹介する。3-2教室から出てきた所で合流したみょうじさんだ」
「慶秋高校のみょうじなまえです。あ、1年です」

学級発表会やら転校初日みたいに拍手が返ってくるわけもなく、居心地が悪くなってぺこりと頭を下げた。

「簡単に高校だけ紹介するよ。左から秀徳、誠凛、海常、陽泉、桐皇、霧崎第一、そして俺が洛山だ」

学校名はジャージに書かれているおかげでなんとかなりそうだ。人数も、学校は多いけど人数の少ないところもあるから、少しずつ覚えられるはず。

「先程ので粗方の手間は省けたから簡単に説明するよ。俺達も君同様、いつの間にかこの校舎にいたんだ。化物が徘徊しているが体育館には入れない。ドアや窓は大抵開くが、校舎の敷地を囲う柵及び門の外へは出られない」
「……」

淡々と説明されるそれは恐ろしいほどすっと頭に入っていく。頭では、分かっているんだ。けれど。

まだ心臓がどくどくしてる、でもそれは走ったからだけではない。頭から消えない本物のような臓器と血みどろの体。吐き気に襲われないのが不思議なくらいだ。

「……黒子」
「はい。みょうじさん、取り敢えず休みましょう」

こくりと頷いてついていくと、髪の短いの女の子が私の顔色を確認する。

「怪我や体調の異変はある?」
「ないです」
「そう。私は相田リコ、誠凛の監督をやってるの。よろしくね、なまえちゃん」
「よろしくお願いします」
「あの、これからどうするんですか」
「結構部員が揃ってない学校ばかりだから、念の為探しに行くつもりよ。さっきのメンツもそんな感じだから」
「さ、探しにって……あっあれに見つかったらどうするんですか?もし捕まっちゃったら」
「細心の注意は払ってるわ。それに校舎にいる人が一番危険だもの」

また校舎に戻るのだろう、少し離れた場所で順番に名前が呼ばれていく。確かに運動部なら足も速いし体力もあるだろうけれど、追いかけてきたあれはどう考えても危ないなんてものじゃない。

"参加者が揃いました"

「なっ」「放送……!?」
「みんな静かにするんだ」

不意に聞こえた音声に体育館が騒ついた。けれど顔を見合わせる一同を無視して音声は淡々と言葉を並べていく。

"鍵を使いクリアを目指しましょう"

「鍵?」
「クリアってどういうことっスか」

"鍵を使いクリアを目指しましょう"

「録音か?」
「だろうな。どちらにせよ俺達に対する反応があるわけないのだよ」

"最初の鍵を配布します"

今度は一度きり、その放送から10秒ほど経つと最後に配布が終了しました、というアナウンスを最後に体育館が静寂に包まれた。
ぱっと立ち上がると相田さんが困惑した顔で私を見上げた。

「鍵、探さないと」
「鍵って言っても……心当たりがあるの?」
「ないけどクリアしたら出れるかもしれないじゃないですか!それに鍵探さないとなんか怒ってさっきのみたいなの来るかもしれないし!」
「確かに、僕もそうした方がいいと思います。一緒に探しましょう」
「黒子君……!」
「わっ私も手伝うよ!テツくん!」

ふと視界に桃色が入ってくる。

「うおぉ、すっご、美人」
「へっ?あ、ありがと。ええと……桐皇バスケ部マネージャーの桃井さつきです」
「あ、ご丁寧にどうも。桐皇は、あー、あの黒いジャージの」

見回した先にいる色黒な人と眼鏡をかけた糸目の人のいる場所に目を止める。なんというか少しガラが悪そうだけれど、こんな可愛い子がマネージャーしてて問題ないのだろうか。そう考えていると糸目の人がこちらに向かってひらひらと手を振る。部員同士の仲はいいみたいだ。

「真ちゃん、俺らも探すとしようぜ」
「笠松先輩、俺らも」

ばらばらと皆が立ち上がり、それぞれ分担して体育館内を歩き回る。小さな小さな、どんな形かもわからない鍵を探して。


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