明日の君と溺死 | ナノ




それから長い長い話し合いが始まった。まずはどうやってあの場所にいたのか。私は気付いたらあそこにいたとしか言いようがなくて、目的がどうとか言われても困る。そんな答えで納得するはずもない向こうがヒートアップしたのを誰かが落ち着けて、今度は私の素性について。問題は、そこだった。

住所を告げると眉をひそめられた。家に電話をかけると違う人が出た。通っている大学は誰も知らず、検索にもひっかからない。昔通ってた高校も、中学も、小学校も。バイト先も、おばあちゃんの家の電話も。

冷や汗で背中がびっしょりだった。なんで、なんでなんでなんで。そんな焦りが私の中を埋め尽くしていく。もしかしてここにいる人がみんなして私を騙してるんじゃないか、テレビのドッキリか何かとか、ただの冗談だって。そう言ってくれる人は何処にもいない。みんなが私を厳しく見据えるだけ。
もう考えられることは全部して、もう何も出来ずにいる私からその視線がふと外れて。また話が始まった。これはきっと、最終決議だ。

「……迅、どうだ」
「玉狛にいるよ、ごく、普通にね」
「それはどういう意味だ」
「この子には悪いけど、これから暫くはこの子の疑いが晴れる事も、逆にこっちに不利な事が起きるわけもなく過ごす事になる」
「それは確定しているのか」
「驚くほどにどういってもこうなるんだな、これが」

まるで未来が見えるみたいな話し方だと思いながら話を聞く。私にはもう、祈る他にはそれぐらいしかできる事がない。

「玉狛だと……?そんなことしてもう一人のネイバーと手を組んだらどうするつもりだ、迅!」
「この子はネイバーじゃなくて普通の女の子だよ」
「だが断言するには確証が足りん。三輪の言うことにも一理はあるぞ」
「なら尚更玉狛だろ。力量としても問題ないし、もしもを考えるならそれこそ迅に任せた方がいい」

暫くの議論、そして玉狛とやらの責任者らしき人の発言を経て、彼は口を開いた。

「玉狛に一任しよう」



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