明日の君と溺死 | ナノ



(そういえば……)

今日はリビングでテレビを眺めていた。ちょうど面白いバラエティ番組がやっていたから、ラッキーと思っていた矢先、途中に入ったCMで今度放送するホラー特番の予告が入る。急にハッとして今の状況を振り返った。

すっかり感覚が鈍っていたけれど今日はみんな任務や用事で不在だ。支部に残っていることの多い陽太郎まで林藤さんと出かけてしまったし、栞ちゃんも本部の方に顔を出しているらしい。そういえば最近、近所のスーパーでの買い物とか少し留守番とか、私1人で行動出来るようになってきている。そのせいだろう。


1人で過ごすには広すぎるリビングで辺りをちらりと見渡した。もう日は傾いている。別に何もないくせに後ろを振り返るのが怖くて、テレビに意識を集中させながら、今日の予定を確認した。
今日は栞ちゃんが夜に、迅くんは時間が分からないけど夜ご飯を食べるらしくて、他のみんなは遅くなるみたいだった。まだ暫く時間はある。ソファで膝を抱えてチャンネルを変えた。またCMが入ったらたまったもんじゃない。けれど他の局はいまいちパッとしなくて、ため息をついてニュースを眺めていることにした。

「早く帰ってこないかなぁ」

暇だ。そう思うのは今に始まったことじゃない。もうこっちに来て思った以上に長い期間が経とうとしてる。一ヶ月ぐらいだったか。大半を此処で過ごしてきた。正直引きこもりも楽じゃないな、なんて思うほど苦痛だった。
でも、この様子だったらもう少し経った頃にバイトでもさせてくれるかもしれない。太刀川くんや風間さんにもあれから会ってないからまた話し相手になって貰えたらいいけれど。
と、物音がした。誰か予定が早く終わったのか、それか迅くんか。泥棒なんてことはないだろうと断言できる心持ちでいるくせに、さっきのホラー映像がよぎってつい、心臓が騒つく。足音は少なくとも、栞ちゃんの足音っぽくはない。

(となれば迅くん。迅くんだ)

けれど視線をドアに向けることもできないまま、膝を更に小さく丸めて顔を伏せた。足音が止まってがちゃりとノブを回す音。ドアが開いて、それで多分、誰にしろ声をかけてくれるはずだ。

「……」

けれど、何も喋る気配はない。ドアが閉じる音。いや、もしかしたら寝ているって思われているのかもしれない。様子を伺うように伏せてた顔を上げて、喉がひくついた。

「っ!!」
「ただいま」
「っ、おかえり」
「びっくりした?」
「ちょっとだけね」
「足音とかドアの音で気付いたと思ったんだけど」

一瞬どきりとしたけれど、すぐに困ったような眉尻の下がった笑顔を浮かべる。

「いや、ぼーっとしてて」
「そっか」
「ご飯作る?」
「うん。暇だし手伝うよ」
「ありがとう」
「あと、夜にお化けが怖くなったら俺が添い寝してあげる」
「っ……」

逃げるように背を向けた彼と向き直る。にっこりと、わざと作っていることがわかるように浮かべた笑顔。

「私、吐いたの?」
「あんまり平気だって強がるから怪談話したらこれがいー反応で」
「えげつない……」




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