鈍痛 | ナノ




「また来てるな」

最初は正直気味が悪かった。毎回俺のプレーばかりじっと見つめるものだから、熱狂的なファンなのかと思って。

「みょうじうちのクラスじゃ有名だぞ?」
「えっ、そうなの?」
「おう。お前のプレースタイルをすっげー尊敬みたいでさ」

その話を聞いてから少しだけ見方が変わった。あの視線は全部、俺のプレースタイルを。尊敬されていることは純粋に嬉しいし、何より恐怖を感じた。頑なに教えを拒み続けた俺のプレーを見つめる飛雄のようだと。
だからバスケットボールをしていたのだと聞いた時は安心したのを覚えている。羨ましいと心の底から言ってくれたから、プレイヤーとしても観客としても見てくれているのだとも思えた。
少し……いや、かなり言い合いをして大事になりかけたけれど、あんな風に思っていることを吐き出せたせいかいい思い出、みたいになってて。男の子っぽい?いや体育会系っていうのかな、それともクールな性格なのか。少なくとも女の子とこんな風に遊んだり、愚痴をぽろっと言えたりしないから。
実際に話したのは最近でも、ずっと前からお互いを認識してたせいか今ではもう大事な友達。なんだと思う。

”影山 飛雄さんがプロフィール画像を変更しました”

だからそれを見た時は心臓が締め付けられるように感じた。
だって飛雄は彼女と同じ場所に立っている。あいつとの方が波長が合うだろうし、理解出来る。
心を許した友達を取られるという想像、飛雄と接したことでやっぱり自分は天才で俺の事が理解出来ないと拒絶されるのではないかという恐怖、俺の背中を追い抜こうとする飛雄への焦燥。
気付けば彼女にメッセージを飛ばしていて、はっとしてそれをふざけた口調へと運んだ。けれど内心では相変わらず淡白で少ない返答にもやもやしていて、そんな彼女から電話がかかってきた瞬間、咄嗟に通話ボタンを押していた。

”及川さん”

やめろ。また、俺から奪おうとするのか。俺を追い詰めるのか。あの時の俺を見上げる視線がまだ、頭の中に残っている。通話の切れた携帯を放り投げて布団に横たわった。



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