鈍痛 | ナノ




「飛雄に会った!?」
「うん、いい子だったね」
「はぁ!?あいつが!?訳分かんないんだけど!目つきも口も悪いじゃん!」
「だってつり目だし、敬語ちゃんと使ってたけど」
「それはなまえちゃんが先輩だったからでしょ」
「それで十分じゃん」
「うっ……ま、まさかナンパされたとかじゃないよね」

がっと肩を掴んで揺さぶられる。なんで彼はこうも飛雄君となると反応が大きくなるのか。これはもう条件反射かな。

「違うよ。私があまりに熱心に及川君のプレー見てるから、セッターやってる経験者かと思ったんだって」
「なんだ……そっか。ってかどこで会ったのさ。あのバレー馬鹿は滅多に街中出没しないよ?」
「スポーツショップで。ちょうどサポーターその他色々買いに来てたみたい」
「ああ……なるほど」

いつも試合を見に来てる上にスポーツショップで会ったとなれば勘違いするのも理解できる、と頷いた及川君からちらりと時計に目を移した。もうすぐ次の授業か。

「そうだ及川君」
「ん?」
「青城、春高の時にはこの前よりめちゃくちゃ強くなってるって言っちゃったからよろしくね」
「!……任せといて!」
「ん。じゃあ教室戻るよ。ばいばい」

及川君や青城バレー部員から聞いていた話とは全然違う子に感じた。高校に上がってからのプレーしか見てなかったからかもしれない。確かに目つきは……かなり悪かったけれど、そう見えていしまう顔立ちだったし、敬語をちゃんと使ってた辺り王様って感じはしなかった。バレー大好きなのは分かったけど。

「先輩は、バレーやってるんすか」
「ううん。私はバスケ経験者でバレーは全く」
「は」

あの時のショック!って顔はまだ忘れられそうにもない。ルールもうろ覚えだと話した時の茫然とした顔は記憶に新しい。

「土俵は違うけど及川君のプレースタイルに憧れちゃって、それで試合を見に行ってたの」
「……そうっすか」
「でもね、影山君もちょっと気になるかな」
「は」
「この間のインハイ、先輩と交代した後がらっと、雰囲気っていうのかな、変わったから。これからもっと凄いセッターになるのかなって」
「あざっす。俺ら、次は全国行くんで」
「そっか、皆で全国か」
「え」
「青城とぶつかる時は試合見るから、楽しみにしてるね」
「はい。あ、あの」
「ん?」
「えっと……いえ、お疲れ様です」
「?お疲れ様です」

お疲れ様ですって癖なのかな。どちらにせよ取っ付きにくい印象だったせいか余計に、後輩が気を許してくれたような感覚が強くて可愛く思えた。



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