鈍痛 | ナノ




大事なのは切り替えること。春高に向けてまた練習に集中して、流石に試合直後はなかったが、暫くすると俺を応援しにくる女の子もまたちょっと増えたからいつも通り手を振り替えして気付いた。

(なまえちゃん……いない?)

体調でも崩したのかな、あとで聞いてみよう。そう思ってその日メールを送ると、家の都合であまり見学に行けなくなってしまったと連絡が来た。それなりにショックではある。だって一年の時から熱心に見に来てくれてたし、割と気楽に接することができる友達でいれたし、飛雄への敵意を笑って応援してくれた友達だ。
残念だけど、また暇な時にでも見に来るように誘うとありがとうと返信が来たから、いつものように早々にメールを終えて眠りについた。

「なぁ及川!」

なまえちゃんが言ったとおり見学に来なくなってもなお、いつも通り練習は続いていた。そのはずだった。

「?どーしたのそんな慌てて」
「お前、……お前みょうじさんと付き合ってなかったの」

ハッとして声を潜めてから話すクラスメイトに内心眉をひそめた。女子には何人か確認を取られたけどまさか男子にまで聞かれるとは。

「普通の友達だけど。なに、なまえちゃん気になるの?」
「おま、人が心配してやったのに失礼だな。違うなら別にいいけど」
「心配って……どういうこと」
「一年の時からファンのみょうじがお前の試合見に行かなくなったから、何かあったのかと思ったんだよ」

それで、付き合ってたけど別れたのかと思ったんだ。帰って来たのはイエスで、とんだ早とちりだと笑ってやる。

「それなら家の都合で来れなくなるってもう聞いてるよ」

カフェか公園か、どこかで話していたのを見られたのか。それとも学校での俺達を見てそう思ったのか。どちらにせよ考えすぎだと告げると向こうは納得するどころか眉をひそめた。

「家の都合で行けなくなるって言ったのか?」
「そうだけど」
「なぁ及川……その、さ」

凄く気になるの歯切れの悪さにこっちも少しだけ顔をしかめて続きを待った。

「やっぱ、お前が気付いてないだけでなんかあっただろ」

放課後。部活に向かう前になまえちゃんの元へ向かった。こうやってちゃんと向かい合うのは妙に久々に感じる。

「どうしたの、及川君」
「今日の放課後、俺の部活終わるの待っててくれる?」
「え、私放課後は」

周りもはばからず話す俺と反対にちらりと視線を彷徨わせる彼女がそう言いかけたのも聞かず教室を後にした。

「それじゃあ部活終わったら連絡するから!」
「ちょっ」

”この間の練習試合の日、友達と遊んでたけど”



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