「俺は今日こいつん家で飯食って帰っから。じゃあな」
「お疲れさまです!」
何人か一緒にいた部員と別れて、同じ道を並んで歩く。
「岩ちゃんの嘘つき」
「お前もな。おら、全部吐け」
「は、吐けって……岩ちゃんってば乱暴!」
「うっせーよ。今日ボロボロだったじゃねぇか」
いいから早く話せ、そう言ったが最後曲げないのを分かっていたからすぐに話をした。彼女と会ってからついこの昨日の事まで。
「今思い返すと言い過ぎたかなって思うんだけど、でもやっぱりムカつくんだもん」
「別にそう思ったんなら言い過ぎでも言えばいいだろ」
「岩ちゃんってほんと男前だよねぇ」
「んだよきめぇな」
「ひどっ!まぁ、確かに言ってよかったとは思うよ。でも何がムカつくって平手打ちしてきた癖に自分の方はなんにも言わないで帰ったんだよ!?」
珍しく声音を荒げてまで言う幼馴染に珍しいな、と岩泉は純粋に思った。天才に挟まれた頃のあいつは酷いもんだった。変なとこで不器用で責任感が強いから、余計に。そして今回も何の因果か相手は天才。
「ちゃんと話してこいよ」
「っなんでさ。余計にプレーに支障が出るに決まってるし」
「だからもう支障が出てんだよ!まだ言い足りねえ事があんなら全部ぶつけてこいっつの!」
「言いたいことはぶつけてるよ!寧ろ言いたいことすら言わないのは向こうなんだよ!」
「じゃあ聞いてこいよ」
「なんで俺が」
「ったく、面倒くせぇ奴だな……!」
何で俺がぎゃーぎゃーぴーぴー喚かれなきゃならねぇんだ思いながら、近所迷惑になるのも構わずぎゃんぎゃん言い合いをして落ち着いたのがこれだ。
「で、だ」
向かい合って座った先にいるのはみょうじ。なんとなく見覚えはあった。熱心に見学に来る奴は話に挙がるもんだ。
(こいつが天才……には見えねぇな)
「何があったかは聞いた。あいつのプレーに影響が出てる以上俺も引っ込んでられねぇんだ。話を聞きたい」
プレーに影響が出てる。そう言うと彼女の表情が歪んだ。悪い奴じゃねぇとは思うんだが。
「何があったかは聞いたんだよね。……何が聞きたいの」
「お前がバスケを辞めた理由」
「分かった」
「早いな。いいのか?」
「私のせいで迷惑をかけてるんだから、話す義務があるでしょ」
これなら及川本人が聞いても答えたんじゃないかと思った。直接聞くぐらいの度胸は持ちやがれあの意気地なしが。
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