鈍痛 | ナノ




「なまえちゃんなまえちゃん!」

かかって来た電話番号は、いつも通りメールアドレスのついでに登録しただけのものである筈だった。出た瞬間今までで一番テンションが高いんじゃないんだろうかという明るい声がした。

「対戦カードが決まったんだ!なまえちゃんには烏野と当たる日を伝えておこうと思って」
「わざわざありがとう。そっか、大会、近いんだもんね」

数ヶ月経って、私はいつも通り試合を見に行っていたけれど大会が近くなるに連れ、邪魔になってはと思い見学は行かなくなった。そのせいであまり実感してなかったんだけれど、そうか、もう始まるんだ。
足が遠のいたとはいえ不思議と今の今まである程度には仲良くしてきた彼の晴れ舞台だ。昔の私の時と重ねて見ているのもあるけれど、彼の友人の一人としても応援している。試合だって見に行くつもりだ。

「その日は絶対にあけておかないと」
「ん。俺大活躍するからちゃんと見てなよー」
「まぁ私は元々及川君見に行ってるようなもんだけど」
「あっ、そういえばそうだったね。照れるなぁ」
「またまたー。じゃあ早く寝て体安めなよ」
「うん、またね」
「じゃ」

通話が切れて数秒してから携帯を耳から離した。まさかこんな真正面から俺だけ見てるなんて言われるとは思ってもみなかったけど、彼女らしいと言えばらしい。
知人にスポーツの経験者は沢山いる。バレー以外も含めると尚更。それなのに、なぜ彼女には違うものを感じるのか。なんとなく検討はついている。なまえちゃんがチームに、天才とそれ以外に、俺と飛雄に、何かしら強い思いがあることを。
案外、俺と似た境遇で何かあってバスケをやめたとか、そんなんじゃないかと踏んではいるけれど、それはもうちょっと仲良くなってからじゃなきゃ教えてくれないかな。
まぁそれが気になるっていうのもあるけど、いい子だし、今のとこいい友達だ。純粋に彼女の応援は嬉しい。
最後に言われた通り布団に寝そべった。練習で疲れた体はみるみる重くなっていき、意識はどんどん浮上していく。飛雄に負けない。そう言ったけど俺はそんなんじゃ満足しない。てっぺんを取る。



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