鈍痛 | ナノ




目が覚めると背中が汗でびっしょりだった。ため息をつく、嫌な夢だ。
及川君とお喋りをして、勝ってほしいなと思いながら寝たその日のことだった。彼にこそスランプとは言ったけど、あれはもうトラウマでしかない。
きっとあの後輩君は恵まれている。及川君のような敵がいるなんて。目の前に立ちはだかる敵がいるなんて。

「ねぇ」

その日の休み時間。たまたま話していたのがバレー部の部員であると聞いて尋ねてみた。

「及川君の後輩の、天才君って知ってる?」
「え?ああ、知ってるけど……そいつがどうしたんだ?」
「いや、この間立ち話した時に妥当後輩君みたいな話になって、どんな子かなと」

そういうと彼は少しだけ苦い顔をした。あまり、人に話していいような内容じゃなかったのだろうか。

「別に無理に話さなくていいよ。ちょっと聞いてみただけだから」
「いや、平気平気。そうじゃなくてさ、そいつ王様って言われるくらい横暴な奴でさ」
「お、王様……」
「あまりに横暴がすぎるって公式戦で引っ込められた事もあるんだよな」
「そんなに酷いの」
「確かに技術は半端なく凄い。天才だと思うけど、なんつーか、コミュニケーションがなぁ……それこそ及川の正反対」
「うわぁ……」
「ただ前に練習試合やった時はなんかこう、何かマシになってた感あるんだよな」

他の奴とは全然だったけど、一人異様にあいつと打ち解けてる奴がいてさ……。
色々と聞いているうちに時間はあっという間に過ぎていく。始業のチャイムに慌てて席へ駆けていったクラスメイトに礼を言って黒板と向き合った。
クラスメイトの言う何か、それが後輩君の更なる成長の予感みたいだった。それが杞憂であればいいのに。
だって、及川君がもしひたすらに強くなった後輩君に負けたらと思うといつかの先輩の顔を思い出してしまうから。後輩君がいつか、私のようになってしまうかもしれないから。



prev / next

×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -