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 この時、まだ愛伊のお姉さんは結婚してなかった。

 まさか自分の愚弟が、自分の婚約者の弟がいる学園でそんなことしているとは思いもしなかっただろう。

 しかもその一番の犠牲が、可愛がってる一番下の弟だったなんて。


 お姉さんは自分の身内の不祥事で、弟やこれから弟になる子を傷つけたことに結婚を取りやめようとしていたくらい落ち込んだらしい。

 まあそれはどうにかなって結婚したお姉さんだけど、この時からそれまで以上に愛伊への家族からの風当たりはきつくなったようだ。まあ当然だよな。

 でも、日高の人間は思ってる以上に寛大で、愛伊にもう少しだけチャンスを与えようと思ったらしい。

 ほら、高校生だから更生の余地があるだろうって。

 もちろんお姉さんは反対したみたいなんだけど、結局愛伊は学園に編入してきた。


 ――それで、まあ前の学園と変わらない現状になる。
 と言っても、今はまだ初期段階って感じだし、それに弟くんポジションはいないから、ましなんだけど。

 でも、同じこと繰り返してんなら今後どうなるかなんて予想つくし、見限られても仕方がないな!


 というふうに日高家からも賛同を得られた俺は、準備万端と道にメールを送ろうとする。

 ……あ、そういえば愛伊を確保するのわすれてた。それに、理事長に愛伊を退学にしてくれって言っとくのも。

 一番肝心なことができてないことを思い出し、俺は早速理事長に電話をかける。

 理事長は日高のまともな人間なので、もちろん即効オーケー。

 もうしわけなさそうな理事長に、「すまないね、身内のことなのに君に任せてしまって。あれはすぐに退学にするよ」と言われてしまった。

 それに、「ああ、そうなんですか。よろしくお願いします」と答え電話を切ると、今度は家に仕えてる家から屈強な男を呼びだそうと電話をかけようとしたけど……。

「ん? 一体誰だよ」

 突然チャイムが連打され、それと同時に扉を思いっきり叩いてるような音。

 ははーん、これ絶対愛伊だな! こんなことすんの、あいつしかいねえし。

 そう思いながらも、扉のところにまで行く。

 青は俺の背中に覆いかぶさるみたいにして、扉を睨みつけていた。

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