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あの後そのままお風呂に入って、二人で上がってきた俺は、そういえば愛伊についての情報を調べておいてとお願いしていたことを思い出し、パソコンの電源を入れる。
「お。来てる来てる」
「? なにがぁ?」
「ん? 愛伊の情報。やるなら徹底的に〜ってな。さっきまでは、道の知り合いのサディストのところにでも売り飛ばしてやろうって思ってたんだけどさ、愛伊ってば美形好きじゃん? たしかその知り合いってすっごい美形だったんだよなぁ」
そんなところに売り飛ばしたら、愛伊ってば絶対喜ぶじゃん。
……たとえ、そのサディストが、人を痛めつけながら抱くことに快感を覚えるんじゃなくて、人を痛めつけて精神を壊してから殺すことに快感を得るやつだとしても。
「……ん? いや、それでもいいか。むしろそっちのほうが絶望感あるんじゃね?」
ほら、ずっと地獄が続くより、最初に少しの希望があれば、堕ちた先の闇はよっぽど暗いだろうし。
呟きながら送られてきたメールに目を通す。
……ふうん。愛伊って、やっぱりあいつが言ってた通り、日高家の人間なのか、一応。
……でも、ちゃんとした血筋じゃないのに、よく、「僕は日高家の跡取りなんだよっ。そのうち日高の家を継ぐんだからね!」なんて言えたよな! たかが、愛伊のお姉さんが日高家の長男と結婚しただけじゃん。
しかも愛伊ってばこのお姉さんにすごい嫌われてるみたいだし。
……へえ、しかも愛伊の弟くんは、日高家次男の恋人なのかぁ。
っていうか、読めば読むほど、どうしたら愛伊は自分が跡取りだなんて勘違いができたんだ?
……あ、もしかして、自分は義兄の父親である現当主に溺愛されていて、次期当主には実の息子である義兄たちじゃなくて、たかだか成り行きで一応身内になった自分を選ぶとでも思ってたのか? はは、ありえねー。
送られてきた資料は、愛伊の情報って言うのはあいつがどれだけ家族に煙たがられてるかっていうのを示していた。
……まあ一部例外はいたけど。生徒会たちみたいな。
これだったら、事情を話したら即了解を得られるだろう。
というか俺が手を出さなくてもそのうち潰されそうだ。家族に。
でも、あいつは俺の手で手を下したいから。俺の大事な子をいじめた償いは、きっちり受けさせる。
だって、いくら嫌っていても、家族なら少し甘い処置になりそうだし。
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